南海電鉄は2021年11月30日のリリースで、貨客混載の実証実験を発表しています。南海の特急で有名な「サザン」を利用して、岬町の魚を難波の料理屋に運ぶという実験です。
南海の貨客混載実験
南海のリリースで発表された貨客混載の実証実験は、岬町の養殖場から難波の飲食店までサザンを使って運ぶものです。
- 実施日:2021年12月1日~24日の特定日
- 輸送区間:みさき公園駅発~なんば駅着
- 輸送物:食材(クエ)
- 実験参加事業者:陸水(食材提供)・南海(輸送)・大阪産料理 空(飲食店)
尚、どの車両形式で実験するのかは不明です。
みさき公園駅からなんば駅まで、サザンと車で時間を比較してみました。
Google先生にお伺いするとサザンでは47分かかると教えてくれます。
ちなみに車だと1時間7分、もしくは1時間16分のルートを教えてくれます。単純に時間だけを比較すると鉄道を使った方が有利です。
自動車の場合、市街地の中心に行けば行くほど、渋滞が発生する可能性が高いので、潜在的な時間差はもう少し開きがあると考えられます。ただ、市街地に入ってからの短距離移動は機動性のある自動車の方が有利でもあるので、一長一短とも言えます。
貨客混載実験の目的
SDGsの取り組みや新型コロナの影響で、鉄道各社ではちらほらと貨客混載の輸送実験が行われています。
南海も今回の貨客混載実験で次の目的を掲げています。
- 鉄道輸送を活用した新しい価値の創造
- 沿線エリアの豊かな自然資源を、多くのお客さまにお楽しみいただく機会の創出
- エネルギー効率に優れた、地球環境にやさしい鉄道輸送による CO2 の削減
- 沿線に根差す企業の支援(沿線企業支援)
SDGsでは以下の項目に該当しています。
- 7:すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
- 11:包摂的で安全かつ強靱で持続可能な都市及び人間居住を実現する
- 14:持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
実験で終わるか、実用化から拡大できるか
輸送実験は鉄道会社が何度か実施しています。
時間的には定時性と速達性のある鉄道の方が自動車での輸送よりも有利ですが、この手の話はお金の問題も絡みます。
貨客混載の送料が高く、飲食店1店舗だけではコストパフォーマンスが悪い場合でも、複数の飲食店が利用するとなると、割り勘効果で安い送料で利用できる様な仕組み作れば金銭的なメリットが出てきます。飲食店に限らず、百貨店の鮮魚店やスーパー等、毎日、鮮魚を商品にしている事業者はたくさんあります。そこのニーズを掘り起こせるかがカギとなるでしょう。
また、食材提供事業者は運んでもらう側ですが、提供者側が都市部に進出して食材を売り込むというビジネスチャンスも考えられます。例えば、百貨店や商業ビルに食材提供側が催事コーナーを設置して知名度を上げ、都市部への営業ルートを作る…という機会に繋がるかもしれません。
飲食店と食材提供者を繋ぐ鉄道事業者も、貨客混載で利用してもらうために妥当な送料や輸送量・輸送頻度を見定める必要もあります。ただ運ぶだけ、では誰も利用してくれません。自動車輸送と比較して鉄道利用時のメリットは何か、という点が最大のポイントになるでしょう。
今回の実験は1店舗のみですが、店舗数が増えた場合に、市街地に入ってからの短距離移動は自動車や自転車・バイクなどを組み合わせることで、長距離の定時性・速達性と短距離の機動性を最大限に活かす方向の検証も実施する必要が出て来るでしょう。
実験で終わらせるか、実用化して貨客混載を最大限に利用出来るか…三者三様の課題もあるので、繰り返しの検証が必要になります。
関連リンク
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