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西武9000系、わずか10年で機器更新が実施された理由

1993年から製造された西武9000系は、西武最後の黄色い電車です。

西武6000系が、プロ野球球団・西武ライオンズのイメージカラーであるライオンズブルーを纏った姿で登場した翌年に、新2000系の見た目で登場した9000系。しかし、1993年の登場後、わずか10年後の2003年に機器更新が行われています。

一般的には15年~20年くらいで機器更新が行われる鉄道車両。どうして西武9000系は登場後10年で機器更新されることになったのでしょうか?

黄色い電車への逆コース

西武9000系は1993年に製造されています。その1年前の1992年、西武は東京メトロ有楽町線に乗り入れ可能な6000系を製造しており、西武車両のイメージは黄色からライオンズブルーに一新されたかと思いきや、新2000系に逆戻りデザインとなりました。

9000系は6000系の翌年に登場したので、「見た目を一世代前に戻しても、中身は最新なんでしょ?」と思いますが、ところがどっこい、床下機器は旧101系の台車・主制御器・主電動機を流用するという、西武お得意の再利用で製造されています。1992年に登場した6000系で最新技術を取り入れたかと見せかけて、1993年に新登場した9000系で逆コースをたどることになりました。

形式 登場 製造形態 車体
西武6000系 1992年 新造 ステンレス
西武9000系 1993年 101系機器の再利用 普通鋼

もちろん、これには理由があります。気分で旧車両の機器を再利用したわけではありません。

池袋線では混雑緩和のために、4ドア化を優先して進めていましたので、車両を新造するよりも、旧101系の機器を流用した方が安上がり&早期落成となります。また、車体も新2000系の意匠をほぼ継承することで、デザイン費用を抑えるなどのコスト圧縮が図れます。西武に限った話では無いですが、こういった施策は、バブル後の経営状態を考えると、仕方ないと言えます。

そして、4000系も旧101系の機器を流用して導入された経緯があり、旧101系機器の流用実績もありますので、9000系でも旧101系機器流用のゴーサインを出します。

しかし、このナイスアイデアとも言える旧101系機器の再利用が、後年になってしっぺ返しを受けることになります。

西武車両たちに潜んだ問題

そんなわけで、西武9000系は、

  • 車体:新2000系
  • 車内:6000系
  • 機器:旧101系

を融合して誕生しました。しかし、ここで問題が起きます。9000系に問題が起きたというよりも、西武の車両全体に問題が起きたのです。

1993年は西武9000系以外にも、ニューレッドアローで有名な西武10000系も製造がスタートしています。そして、10000系も旧101系の機器を流用して製造されたのです。

勘の良い方、というよりもサプライチェーンを熟知している方なら察すると思いますが、こうなると、9000系と10000系における、保守費用の高騰&予備部品確保が困難という問題が付きまといます。

鉄道に限った話ではありませんが、機器の保守というものは時間が経つにつれて保守費用、厳密に言うと人件費が高くなります。

その要因は二つ。

  • 保守担当者の年齢が上がる=人件費が増える
  • 保守が出来る人が少なくなる→知識が乏しい人が担当するので必然的に工期が伸びる1=人件費が増える

この二つです。どちらにしても、時間が経つとお金がかかります。

また、どこかしらの部品が故障して、予備部品が手元に無い場合、新規に個別発注となると、その部品が古いほど、製造ラインが無くなっている可能性があります。そうなると、オーダーメイド扱いでの発注になるので、必然的に部品の調達費用が高くなるのです。

登場後10年で機器更新

9000系が登場した当時、既に導入が始まっていた6000系でもVVVFが導入されていたように、鉄道車両の技術は大きく進歩していました。その中で、9000系や10000系は旧101系の機器を流用して登場したので、新造と比較して安上がりではありますが、時間が経つにつれて保守費用が膨らむという問題を抱えたまま運用に就いていました。

また、副次的な問題としては、旧101系の機器を流用した9000系や10000系がこのまま走り続けると、故障時の運用離脱の際に、予備部品不足による長期運用離脱の問題にも直面することにもなります。

そして、保守費用増大および予備部品不足に起因する長期運用離脱の解決策として、西武は9000系の床下機器の更新を2003年から実施します。9000系の登場からわずか10年後のことです。

機器更新にあたって、2003年当時の最新車両である20000系に準ずる機器に更新します。抵抗制御装置は日立製作所のIGBT-VVVFインバータに交換、主電動機も回生ブレーキ併用の全電気ブレーキに交換し、ついでに最高速度も110km/hから120km/hにアップ(ただし、営業最高運転速度は105km/h)するなど、とりあえずは9000系の床下機器の近代化を実施しました。

その結果、9000系は、

  • 車体:新2000系
  • 車内:6000系
  • 機器:20000系

という状態になりました。尚、機器更新後は20000系の予備部品を使用出来るようになったので、9000系に使用していた旧101系の機器及び部品は、10000系の予備部品として確保出来るようになりました。

編集後記

似たような機器流用の話、分かりやすいところだと、初代AE形の機器を流用して京成3400形が登場しています。しかし、初代AE形は成田闘争が原因で、登場から6年くらいは、あまり走行していません。そのため、床下機器の経年劣化も少なく、初代AE形7編成のうち、5編成を3400形にしているため、機器も多少は確保できています。

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注釈

  1. もちろん、大企業の内部統制上、監査等でマニュアルは残しているはずだが、熟練技術者がいなくなると、どうしても時間がかかる