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【京阪】8000系8008F、走り過ぎていた模様(検査実施基準の走行距離を超過)

2024年1月26日、京阪電鉄の発表で、8000系8008Fが走行距離60万kmを超過して営業運転に就いていたことが判明しています。

既に8008Fは2023年12月13日から法定検査を実施しており、走行距離が超過したことによる車両故障は発生していないとのことです。



原因はシステム不具合と確認不備

2023年11月21日に撮影した8008F。この1週間後から走行距離超過していた模様。

プレスリリースに記載がありますが、原因は「システム不具合が発生した際の対応を誤った」「確認不備」とのことです。

2.原因
①システム不具合への対応処理誤り
車両の走行距離を管理するシステム(以下「走行キロシステム」)に不具合が発生し、不具合を復旧する際に必要となる処理の一部を実行せず、結果として誤って「2023 年 5 月分の走行距離データ」が累積走行距離データに反映されていない状態となり、その累積走行距離を基に法定検査計画を策定していたため。
②確認方法の不備
走行キロシステムから抽出した帳票について、当月末時点の累積走行距離を確認するのみで、前月末時点との比較を行っておらず、異常を発見できなかったため。

―京阪電鉄「【お詫び】京阪線における一部車両の走行距離超過について」より引用

2023年5月の走行距離が欠落した状態で累積走行距離が算出されてしまい、結果、前回検査後に走行距離60万kmを超えている状態で、2023年11月27日~12月12日の16日間、営業運転に就いていたことになります。

対象編成 走行距離 法令で定められた走行距離を
超過して走行した期間
8008F 610,435.6km 2023年11月27日
~2023年12月12日

尚、その他の車両についても走行距離の確認を行い、走行距離超過は無いとのことです。

再発防止策も合わせて発表されており、

① システム不具合が発生した際、処理完了の確認を確実に行うなど、対処方法を改めて社内担当部門で周知し、徹底します。
② 走行距離データについて、前月分との比較を行うなど、走行距離を適切に管理すべく、確認方法の見直しを図ります。

―京阪電鉄「【お詫び】京阪線における一部車両の走行距離超過について」より引用

という対策をとることが記されています。



京阪の各種検査基準

鉄道車両の検査については、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」で定められており、鉄道各社はその法令(省令)に基づいて検査基準を定めています。

京阪も例外ではなく、京阪における各種検査内容と具体的な基準(検査タイミング)については、『鉄道ピクトリアル No.1004 2022年10月号臨時増刊 【特集】京阪電気鉄道』 で確認することが出来ます。

該当誌の62ページに掲載されている内容は以下(以下表は誌面内容を一部改変)。

検査種別 検査内容 検査のタイミング
列車検査 列車の主要部分について外部より行う検査 10日を超えない期間
状態・機能検査
月検査
車両の状態及び機能について行う検査 3ヶ月を超えない期間
重要部検査 動力発生装置・走行装置・ブレーキ装置等、
重要な装置の主要部分について行う検査
以下のいずれか短い期間
4年を超えない期間
・当該車両の走行距離が60万kmを超えない期間
全般検査 車両全般について行う検査 8年を超えない期間
臨時検査 臨時で行う検査 新製・購入
重要な改造・修繕
脱線その他の運転事故が発生した車両で
故障またはそのおそれがある場合
使用を休止した車両を使用する場合
その他必要がある場合

今回の事案の場合、重要部検査を前回実施してから、4年以内 or 走行距離60万km に到達する前に、重要部検査を実施する必要があります。しかし、8008Fについては走行距離610,435.6km に達していたため、60万kmを超えてしまっています。



超過の根本原因はヒューマンエラーなのでは?

システムの不具合が発生し、その後の対応がよろしくなかった…ではなく、問題なのは「②確認方法の不備」です。

「走行キロシステムから抽出した帳票」というものが、どういうフォーマットで出力されるのかは公開されていませんが、帳票出力後には「当月末時点の累積走行距離を確認するのみ」というオペレーションということです。それだと、データの欠落を拾うのは少し難しいと考えられます。

対策については、

② 走行距離データについて、前月分との比較を行うなど、走行距離を適切に管理すべく、確認方法の見直しを図ります。

とありますが、比較項目を増やすだけでは見落とす可能性があるので、帳票を出力するシステム画面の改修や、帳票フォーマットの抜本的な変更が必要になると考えられます。

例えば、以下の様な帳票フォーマットで出力されていれば、今回の様な走行距離の超過を防げていたかもしれません(値は適当)。

編成 N月走行距離 前回検査後
累計走行距離
予測 実績 予測 実績
8008F 12,345.67 km 12,321.09 km 550,1234.56 km 548,1234.56 km
8009F 8,901.23 km 8,888.88 km 420,8765.48 km 421,8765.48 km
3001F 8,765.43 km 8,787.87 km 377,7895.01 km 378,7895.01 km
3002F 7,654.32 km 7,612.98 km 10,1234.48 km 9,1234.48 km

特定月の走行距離について予実管理しておき、それを毎月確認出来れば、今回の様な走行距離の超過は防げると考えられます。もしくは、走行距離超過基準に近づいたら、システムアラートを表示するとか、システム側から管理者や担当者に知らせる方法はいくらでもあると思います(実装できるのであれば、という前提ですが)。

システム開発だと当然レベルのことで恐縮ですが、予測値については走行実績のテーブルとは別のマスタで管理すれば、走行距離のデータが欠落した時に値の開き具合を検知できると思います。

最終的には人間による確認が発生し、人間が決定することは避けられません。そのために、システムからアウトプットするものは人間が異常検知できるものにして、人間のオペレーションも異常を検知できるように整備する必要があります。



編集後記

「何か分からないけど、とりあえずヨシ!」みたいな現場猫案件にならないようにしたいわね😺ヨシッ

関連リンク

【お詫び】京阪線における一部車両の走行距離超過について|京阪電鉄

鉄道に関する技術上の基準を定める省令|国土交通省

鉄道に関する技術上の基準を定める省令の解釈基準|国土交通省

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