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【東武】野田線の新車導入と5両化…歯切れが悪い理由は?

2022年4月28日、東武鉄道のリリースで、東武アーバンパークライン(野田線)向けの5両編成の新型車両の導入を発表しました。

鉄道ファンにとては解釈に困る様なリリース内容ですが、環境問題に対応することを掲げていますが、「新しい生活様式」と述べていることから新型コロナウィルスの影響による利用者減によるものと考えられます。

ただし、どうやらそれだけでは無さそうな雰囲気です。




新車導入と5両化

2022年4月28日にリリースされた東武鉄道では以下が発表されています。

  • 野田線に新型車両を導入
  • 6両編成を5両編成化(列車本数は維持)

いずれも、省エネ化を目的とした環境問題への対応と、新しい生活様式への対応と述べています。新型車両についての詳細は明記されておらず、今後の発表を待つことになります。

しかし、今回のリリースの内容を見ると、体裁を取り繕ったためか、どこか歯切れの悪い書きっぷりです。

1両減車で約2割弱の輸送人員マイナス

ところで、6両編成から5両編成に減車することで何が起こるかと言うと、1編成あたりの輸送人員が減少するという事です。

この1両減車による輸送人員の減少を60000系で試算してみます。

60000系の車両定員は先頭車133名・中間車146名です。6両換算にすると、編成定員は、

133名×2(先頭車2両)+146名×4(中間車4両)=850名

です。ここから中間車1両を引き算すると、

133名×2(先頭車2両)+146名×3(中間車3両)=704名

となり、6両から5両に減らすことで、約2割の輸送人員が減少することになります。

尚、東武鉄道のリリースにある「適正な列車本数の維持に努める」をどう解釈するかは読み手次第かもしれませんが、リリースの文脈から察するに、運行本数を維持したとしても増便する可能性は低いと考えられます。

つまり、減車しても運行本数を増やすことで輸送人員を維持する…わけではなく、減車しても維持するのは運行本数であり、結果的に輸送人員を減少させることが分かります。



中長期計画の時点で野田線への注力が怪しい…?

野田線の減車から少し話のスケールを大きくします。

東武では長期経営構想を持っており、その中で3年ごとに中期経営計画を策定しています。

直近の「東武グループ中期経営計画2017~2020」はコロナの影響で終了してしまいましたが、この中期経営計画を見るとなかなか興味深いことが分かります。

「コロナ以前の話なのでアテにならない」という心の声が聞こえて来そうですが、むしろ、コロナ以前に策定した中長期的な構想だからこそ、東武の狙いを垣間見ることが出来ます。

中期経営計画で定めた重点エリア

「東武グループ中期経営計画2017~2020」において、中長期的に見て重点エリアと据えたのが、「浅草・東京スカイツリーエリア」「日光・鬼怒川エリア」「池袋エリア」「銀座・八重洲・湾岸エリア」です。

「浅草・東京スカイツリーエリア」「日光・鬼怒川エリア」への重点的投資は、増加するインバウンド需要に対応するためのものです。

「池袋エリア」への投資は再開発に向けたもので、長期的なプロジェクトにはなりますが、対象エリアは約6万㎡にも及ぶものです。利用者数ランキングで毎回上位に食い込み、人の往来は都内屈指を誇る池袋ですから、東武が注力するのも当然と言えます。

「銀座・八重洲・湾岸エリア」についても、日本を代表するグローバル拠点と位置付けて、将来的な発展を見込んでいます。

野田線にも力を入れているが…

観光需要や人の往来が多いエリアばかりに注力し、都心から外れたところにある野田線が完全にスルーされているのかと言えば、それは違います。

清水公園の戸建分譲や、流山おおたかの森のマンション分譲が挙げられているので、東武自身で野田線の利用客を増やす取り組みも実施しています。

ただ、流山おおたかの森についてはつくばエクスプレスも駅を有するため、野田線と言うよりもつくばエクスプレス利用客を想定している…とも考えられます(一概にそうとは言えませんが)。

とは言え、コロナ前に策定した「東武グループ中期経営計画2017~2020」の時から、成熟状態(乱暴に言えば頭打ち)の野田線よりも、将来的に発展が見込まれるエリアに舵を切っている様に見えます。



将来的な人口減も視野に入れた長期的な計画?

話を野田線の減車に戻します。

一時的な利用減であれば、運行本数を絞る暫定対応で凌ぐことが考えられますが、今回の東武のリリースは編成あたりの両数減(6両編成→5両編成)です。この両数減を暫定対応と考えた場合、思い切ったことをしている様に考えられますが、もしこれが暫定対応ではなく、将来を見越した恒久対応であれば話が変わります。

東武野田線は、さいたま市・春日部市・野田市・流山市・柏市・松戸市・鎌ヶ谷市・船橋市を通ります。各市が発表している人口予測を見てみます。

沿線自治体人口区分2020年2050年比率(%)備考リンク
さいたま市総人口1,256,3951,108,22988.2🔗
生産年齢人口797,009611,81576.8
春日部市総人口232,589166,07771.4🔗
生産年齢人口131,43086,76266.0
野田市総人口155,141136,97588.3予測は2040年🔗
生産年齢人口88,84974,35883.7
流山市総人口194,417204,638105.3予測は2030年🔗
生産年齢人口115,973121,698104.9
柏市総人口433,481401,99492.7🔗
生産年齢人口261,049221,65184.9
松戸市総人口480,129371,50377.4🔗
生産年齢人口288,110182,70063.4
鎌ケ谷市総人口110,786108,48797.9🔗
生産年齢人口65,07155,66485.5
船橋市総人口636,500657,700103.32018年
2048年
🔗
生産年齢人口402,200365,90091.0

この様に、20年~30年先の人口予測は日本全国の例に漏れず、野田線沿線の自治体でも緩やかな減少が予測されています。

その中でも、日常的に鉄道を利用する、生産年齢人口(15歳~64歳)減少のインパクトが大きいです。野田線沿線の各自治体における、生産年齢人口の減少予測が2割~3割とされているので、6両編成から5両編成の両数減による輸送人員の2割減は、数字だけ見れば、妥当な判断と言えるでしょう。

流山市は人口増を予測していますが、「大規模マンション建設やつくばエクスプレス沿線における土地区画整理事業などの開発による人口増」が要因としています。
船橋市も総人口は増加予測ですが、主に鉄道を利用する生産年齢人口については減少を予測しています。

先述した「東武グループ中期経営計画2017~2020」の内容からも分かるように、日光・鬼怒川などの観光エリアや、池袋をはじめとした都心エリアに力を入れています。野田線沿線にも東武が住宅供給をしているとは言え、沿線の人口減は超長期的に見て避けられないため、遅かれ早かれ、どこかのタイミングで野田線の両数減に踏み切る決断をする必要が出てきます。

人口減が予測されている中で、新型コロナウィルスの影響で利用客が減少したため、両数減を前倒しする方針を打ち出したと考えられます。



編集後記

つらいわね😿

関連リンク

東武アーバンパークラインに5両編成の新型車両を導入します|東武鉄道

東武グループ長期経営構想・東武グループ中期経営計画2017~2020|東武鉄道(インターネットアーカイブ)

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