2015年に登場した南海8300系。8000系をベースにした車体構造ですが、8000系よりも洗練さに磨きがかかり、よりスマートになった印象を受けます。
さて、基本的には8000系をベースにしている8300系ですが、細かい部分での変更があり、そのうちの一つに、車両前面(顔の部分)のガラス枚数が変更されています。
フロントガラス枚数の差異
8000系の車両前面のガラス(フロントガラス)は、運転席とその反対側、そして中央の貫通扉窓・前照灯ガラスの合計4枚です。
8300系の車両前面のガラスは、運転席と運転席上部の行先表示器に1枚ずつ、運転席の反対側と上部の種別表示器に1枚ずつ、そして中央の貫通扉窓・前照灯ガラスの合計6枚です。
遠目から見ると、8000系・8300系ともに3枚で構成されている様に見えますが、8300系のフロントガラスは、種別・行先表示器が独立しています。
近づいてみると、種別・行先表示器と運転台窓の間に仕切りの有無が確認出来ます。
デザインは8000系と8300系でほぼ同じですが、8300系には仕切りがあるのが分かりますね。
何故、フロントガラスの枚数を増やしたの?
では、何故、フロントガラスの枚数を増やしたのでしょうか。理由は、メンテナンス観点のメリットを考慮したためです。
鉄道車両は、高速で走るという性格上、飛来物による破損を免れることは出来ません。
例えば、走行中に鳥がぶつかって運転台の窓ガラスが破損した場合を想定してみます。スズメやハトではびくともしないと思いますので、鷲や鷹クラスの大型の鳥がぶつかったと想定して…いや、鳥のサイズが問題ではなく、破損した場合のことを考えましょう(コンドルが突撃してきたら流石に破損するかも)。
8000系の場合、運転台の窓ガラスが破損すると、運転台と行先表示器を覆う窓ガラスを交換する必要があります。
先ほどの8000系の写真をもう一度出します。運転台の窓ガラス破損で、写真上④の大型のガラスを交換する必要があります。
一方、8300系の運転台の窓ガラスが破損した場合、運転台の窓ガラスのみの交換で済みます。8300系の写真上⑥のガラスを交換する必要がありますが、その上の写真上⑤のガラスは交換する必要がありません。
8000系はガラスのサイズが大きいので、その分の交換作業に手間がかかりますが、8300系は8000系に比べて1枚あたりのガラスの面積が小さいので、交換が容易になります(とはいえ8300系の運転台窓ガラスも決して小さくはないので、それなりに大変だと思いますが)。
当然、ガラス枚数が増えるため、ガラス発注のコストはかかると思います。ですが、交換作業を簡単にした方が、破損時の復旧がスムーズに行われ、営業運転に復帰するリードタイムも早くなります。
編集後記
みんなも南海に乗った時にフロントガラスの枚数見てみてね😺
参考文献
『鉄道ピクトリアル No.1017 2023年10月号 【特集】南海電気鉄道』株式会社電気車研究会