2017年から京阪で導入されたプレミアムカー。2017年に8000系でサービスが開始され、2021年から3000系(2代目)にもプレミアムカーが組み込まれてサービスが拡大されています。
京阪では、長年、特急料金不要でしたが、特急列車のうち1両だけを座席指定サービスに改造しています。400円~500円を追加料金として支払えば、着席保証&豪華な座席に座れるという、まさにプレミアムなサービスです。
ところで、そんなプレミアムカーですが、定期券は発売されるのでしょうか?
プレミアムカー定期券の構想は無さそう
プレミアムカーの定期券の構想については、鉄道ピクトリアル上で述べられています。
『鉄道ピクトリアル No.1004 2022年10月号臨時増刊 【特集】京阪電気鉄道』において、京阪電鉄の代表取締役社長・平川良浩氏と流通経済大学経済学部教授・板谷和也氏との対談で、平川氏が次の様に述べています。
(前略)プレミアムカーは1編成1両のみなので、定期販売までは今のところ考えていません。朝ラッシュと休日は利用が多いのですが、平日の昼間帯は比較的空席があるので、旅行会社に10席や15席といった単位で販売するようなことを始めています。
―『鉄道ピクトリアル No.1004 2022年10月号臨時増刊 【特集】京阪電気鉄道』21ページより引用
まあ、社長さんが言ってるのでプレミアムカーの定期券は登場しなさそうです。
また、京阪公式のプレミアムカーのWebページで、定期購入の可否について質問が掲載されており、「定期券は無い」と回答が載っています。
Q.通勤で毎日利用しようと思えば定期購入が可能ですか?
A.プレミアムカー、ライナー列車の定期券はありません。
※会員お一人さまあたり最大5列車までご予約いただけます。
ただし、プレミアムカークラブ会員限定ですが、最大5列車まで予約可能の案内をしていることから、定期券よりも、回数券の様な仕組みの方がベターと考えた結果でしょう。
プレミアムカーの定期券は成立する?
個人的にはプレミアムカーの定期券は得策ではないと考えています。
仮に、プレミアムカーの定期券を発売するとしても、
- 投資に対する利益回収は可能か?
- 購入した人が満足にサービスを享受できるのか?
という2点がポイントになります。
投資に対する利益回収は可能か?
現状のプレミアムカーは1列車に対して予約をかける仕組みです。プレミアムカークラブ会員であれば最大5列車まで予約可能ですが、予約枠が5枠あるだけで、1枠予約する仕組みを5回まで使用可能にしているだけと考えられます。
これを定期券化すると、「特定の時間の列車を、一定期間全て押さえる」という仕組みに変更する必要があります。
加えて、払い戻し発生時の仕組みや、定期券指定席が直前キャンセル発生した場合の措置など、かなり広範囲での再設計が必要です。それに伴う駅員や乗務員のオペレーションも追加する必要がありますし、追加オペレーション研修の時間も必要です。
他にも色々あると思いますが、プレミアムカーの定期券化に関連するハード・ソフト面にお金をかけて、プレミアムカーの定期券がいくつ売れたら回収できるのかを試算する必要が出てきます。
とは言え、素人レベルで考えていることくらい、京阪は既に考えていると思います。恐らく、費用対効果に見合わないという結論が出ているのかもしれません。
購入した人が満足にサービスを享受できるのか?
仮に、プレミアムカーの定期券が開始されたとして、プレミアムカーの定期券を購入した人が、満足にサービスを享受できるのかも気になるポイントです。
京阪電鉄社長・平川氏が仰っている様に、プレミアムカーの利用はラッシュ時間帯が多い印象です。満員御礼とまでは行かないですが盛況です。特に、夕方ラッシュ時は「今日は疲れているからプレミアムカーに乗ろう」みたいなサラリーマンが多いですね。
ただ、プレミアムカーの定期券化をした場合、指定列車の指定席に乗車する必要が出てきます。「定期券化」なんて言ってしまうのは簡単ですが、通勤通学定期券との違いはそこです。
サラリーマンであれば分かると思いますが、普段、仕事をしていると、定時でキッチリ上がれることなんて滅多にありません(毎日定時でキッチリ上がれる職種もあると思いますが)。定時キッチリに上がれても、列車の乗り換えで時間がかかったりして、時間通りに移動するのは難しいです。
となると、
という可能性が出てきます。
そうすると、せっかくのプレミアムカー定期券がユーザーにとって「損失」になってしまいます(指定列車の指定席に乗れなくなった場合は個人の都合なので自己責任なのですが)。
なので、現状のプレミアムカークラブ会員の、最大5列車まで予約できるシステムにとどめておく方が、ユーザーにとっても損はしないと考えられます。
編集後記
「乗れそうなら今日はプレミアムカーにしようかな」って感じ需要だと思うから、無理にプレミアムカー定期券は作らなくて良いかもね😺
参考文献
『鉄道ピクトリアル No.1004 2022年10月号臨時増刊 【特集】京阪電気鉄道』