阪急の神戸線・宝塚線と京都線では、その成立の経緯から、車両の寸法が若干違います。神戸線・宝塚線の車両は全長が京都線車両よりも少しだけ長く、京都線車両は神戸線・宝塚線の車両よりも少しだけ幅があります。
まあ、色々あって、現在は車体の標準寸法が定められているのですが、実際のところ標準寸法はどのようになっているのでしょうか?
阪急の標準寸法
阪急の標準寸法は、過去に阪急公式ホームページで公開されていました。それによると、
標準寸法 | 連結面間 | 高さ | 標準的な車体幅 |
神戸線 宝塚線 |
19,000mm | 4,095mm | 2,750mm |
京都線 | 19,000mm | 4,095mm | 2,800mm |
【備考】 ・連結面間…いわゆる全長 ・大阪メトロ乗り入れ車の連結面間は18,900mm ・高さ…パンタグラフ折り畳み時のクーラーキセ頂点まで |
と定められています。これは7300系が登場するタイミングで定められたものです(1982年頃)。
何故、標準寸法を定めたのかと言うと、神戸線・宝塚線・京都線で車両を共通して使えるようにするためです。
過去にも標準寸法が定められていた
阪急では、7300系が登場する以前にも標準寸法が定められています。それは神戸線810系・京都線710系が登場した1950年のこと。
当時の技術担当役員が「神戸線・宝塚線・京都線で共通して使用出来る標準車体を制定し、製造するように」と指示したことが発端です。
この時に、「京都線車両の全長」と「神戸線車両の車体幅」を組み合わせて、
- 全長19,000mm
- 高さ4,260mm
- 全幅2,750mm
という標準車体(標準寸法)が定められます。
ただし、この時は乗り入れ先の他社線の寸法を考慮したものではなく、阪急電鉄(1950年当時は京阪神急行電鉄)の各線内に限定したものでした。
ところが、1950年に定められた標準寸法は、1967年に製造された3300系によって有名無実化してしまいます。
3300系は大阪市交通局(現・大阪メトロ)堺筋線の乗り入れのため、標準寸法の全幅2,750mmを100mmオーバーした、全幅2,850mm(車体幅2,800mm)で製造されたからです。
なので、7300系の時に定められた標準寸法は、大阪市交通局(現・大阪メトロ)堺筋線の乗り入れ規格に準じたものであり、尚且つ、神戸高速鉄道に乗り入れている阪神(と当時乗り入れていた山陽電鉄)・将来的に神戸市交通局との兼ね合いも考慮して弾き出されたものでした。
どの形式が標準寸法におさまる?
ちなみに、標準寸法におさまる形式はどれでしょうか。2022年時点で現役の各形式の寸法を見比べてみましょう。
形式 | 所属 | 製造年 | 全長 | 全高 | 全幅 | 備考 |
3300系 | 京都線 | 1967年 | 18,900mm | 4,120mm | 2,850mm | 車体幅は2,800mm |
5000系 | 神戸線 | 1968年 | 19,000mm | 4,145mm | 2,750mm | |
5100系 | 宝塚線 | 1971年 | 19,000mm | 4,095mm | 2,750mm | |
5300系 | 京都線 | 1972年 | 18,900mm | 4,095mm | 2,850mm | 車体幅は2,800mm |
6300系 | 京都線 | 1975年 | 19,000mm | 4,095mm | 2,850mm | 車体幅は2,800mm |
6000系 | 神宝線 | 1976年 | 19,000mm | 4,095mm | 2,750mm | |
7000系 | 神宝線 | 1980年 | 19,000mm | 4,095mm | 2,750mm | |
7300系 | 京都線 | 1982年 | 18,900mm | 4,095mm | 2,800mm | 阪急標準寸法で製造 車体幅は2,780mm |
8000系 | 神宝線 | 1988年 | 19,000mm | 4,095mm | 2,750mm | |
8300系 | 京都線 | 1989年 | 18,900mm | 4,095mm | 2,850mm | 車体幅は2,800mm |
8200系 | 神宝線 | 1995年 | 19,000mm | 4,095mm | 2,750mm | |
9300系 | 京都線 | 2003年 | 18,900mm | 4,095mm | 2,800mm | 阪急標準寸法で製造 車体幅は2,780mm |
9000系 | 神宝線 | 2006年 | 19,000mm | 4,095mm | 2,750mm | |
1000系 (2代目) |
神宝線 | 2013年 | 19,000mm | 4,095mm | 2,770mm | 車体幅は2,730mm |
1300系 (2代目) |
京都線 | 2014年 | 18,900mm | 4,095mm | 2,825mm | 阪急標準寸法で製造 車体幅は2,780mm |
上の表の通り、現在の標準寸法におさまる形式は、神戸線・宝塚線は5100系以降の全形式、京都線は7300系・9300系・1300系です。
尚、1000系の全幅は2,770mmですが、車体幅が2,730mmなので、「車体幅」という観点では、ギリギリ標準寸法に収まっています。
編集後記
あとは中津駅さえ何とかなれば…😺
参考文献
『阪急電車』山口益生著 JTBパブリッシング
『鉄道ピクトリアル No.837 2010年8月臨時増刊号 【特集】阪急電鉄』 株式会社電気車研究会
『鉄道ファン 2014年2月号』 交友社
関連リンク
【ここまで揉める?】堺筋線vs阪急、苦闘の相直バトル|Osaka-Subway.com(個人サイト様)