鉄道車両では1両ごとに固有の番号が振られています。いわゆる車番と言われるものです。各鉄道事業者において、ある一定の法則に基づいて車番が割り振られています。
当サイトで頻繁に取り上げられている阪急でも、車番を割り振る際に一定の法則(基準)に基づいて車番が割り振られています。
では、阪急ではどのように車番が割り振られているのでしょうか?
阪急の車番体系
阪急の車番の割り振り方(以下、車番体系)というものは、一定の法則に基づいて車番が割り振られています。正式な車番体系は阪急電鉄の社内規程を閲覧するしかないのですが、私を含めて外部の人間では少し難しいです。
しかし、以下3つを参照すれば、阪急における車番体系を調べることが出来ます。
- 過去の阪急電鉄公式ホームページ
- 阪急電鉄OB著作
- 阪急電鉄公式Twitter
過去の阪急電鉄公式ホームページ
かつて、阪急電鉄の公式ホームページで、車番体系について公開されている時期がありました。
2022年現在、阪急電鉄の公式ホームページでは閲覧できませんが、インターネットアーカイブ上で、当時公開されていた「車番付与規程」のページで、車番体系の基準を閲覧することが可能です。
阪急電鉄OB著作
阪急電鉄OBである山口益生氏の著作『阪急電車』(JTBパブリッシング)においても、阪急の車番体系について言及されています。それによると、1984年11月に「車両番号付与基準」が制定されたことが明記されています(該当箇所は164ページ)。
過去の阪急電鉄公式ホームページに掲載されていた「車番付与規程」と、山口氏の著作に記載されている車番体系の基準については、ほぼ同じです。
阪急電鉄公式Twitter
加えて、阪急電鉄の公式Twitterでも車番について言及しているツイートがあります。
阪急電車の車番の付け方ですが、
9000・9300系まではこちらの通りです。■1997年1月20日にタイムワープ!!!https://t.co/lpjPD7El1B
大量増備想定の1000・1300系からは、それまでの法則ですと同形式で編成数が多くなった際に番号が枯渇する懸念やその他の理由から、法則がかなり変わりました。 https://t.co/nS1vpyPk71
— 阪急電鉄 【公式】 (@hankyu_ex) January 31, 2020
先述した過去の阪急電鉄公式ホームページの「車番付与規程」のページにて、9000系・9300系まではその通りであることを言及されています。
9000・9300系以降は、製造順=下2桁ですが、
6000系~8000系は、十の位にも意味がありました。6000系の例
00~:8両編成
10~:6両編成
20~:2両編成ちなみに、6000系以降で、編成の下1桁がズレている場合、途中で編成を組み替えたからというのが多いですね。
— 阪急電鉄 【公式】 (@hankyu_ex) April 25, 2018
また、6000系~8000系の下2桁の番号についても言及されています。
車番体系のルール(当サイト注釈版)
というわけで、過去の阪急電鉄公式ホームページに掲載されていた「車番付与規程」と、阪急電鉄OB・山口益生氏の著作、加えて、阪急電鉄公式Twitterのツイートの整合性を取りつつ、総合的に勘案し、誰にも頼まれていませんが、勝手に車番体系のルールを一覧にしてみました。
基本の車番体系
まずは基本になる製造時の車番体系です。
順位 | 基準 | 付与番号 | 当サイト注釈 | ||
1 | 車両番号は4桁の数字で表す (9000の次は1000に戻すことを含みとする) |
– | 原則4桁数字の定義 | ||
2 | 1位の数字 車両形式の系列の代表 (千の位) |
1xxx 2xxx 3xxx 4xxx 5xxx 6xxx 7xxx 8xxx 9xxx |
神戸線・宝塚線・京都線で共通 | ||
3 | 2位の数字 (百の位) |
a.運転台あり | ⅰ.神戸線・宝塚線:0、1 | x0xx x1xx |
0…大阪寄り運転台車 1…神戸・宝塚寄り運転台車 |
ⅱ.京都線:3、4 | x3xx x4xx |
3…大阪寄り運転台車 4…京都寄り運転台車 |
|||
ⅲ.共通予備:2 | x2xx | 神戸線・宝塚線・京都線で共通 | |||
b.運転台なし | ⅰ.神戸線・宝塚線:5、6 | x5xx x6xx |
|||
ⅱ.京都線:8、9 | x8xx x9xx |
||||
ⅲ.共通予備:7 | x7xx | 神戸線・宝塚線・京都線で共通 | |||
4 | 3位の数字 (十の位) |
a.主電動機あり0~4の製作順 | xx0x xx1x xx2x xx3x xx4x |
M車(モーター車) 神戸線・宝塚線・京都線で共通 |
|
b.主電動機なし5~9の製作順 | xx5x xx6x xx7x xx8x xx9x |
T車(付随車) 神戸線・宝塚線・京都線で共通 |
|||
5 | 4位の数字 (一の位) ・製作順 ・0から始める |
xxx0~ | 神戸線・宝塚線・京都線で共通 | ||
6 | 車種ごとに最も若い番号がその車種の車両形式 | – | 車両形式の定義 | ||
7 | その系列に属する制御電動車の内で、最も若い形式がその系列を代表 (制御電動車が存在しない場合は想定の制御電動車) |
– | トップナンバーの定義 |
基本は上記の表の法則で製造時に車番が割り振られることになります。
ただし、製造時における車番体系のため、組成変更や改番が発生すると、上記の車番体系から外れてしまう場合もあります。
十の位の割り振り
阪急電鉄公式Twitterで言及されている様に、6000系~8000系(8300系含む)について、十の位にも割り振りの法則が存在します。基本の車番体系からは少し異なり、形式で割り振り方法が異なり、例外も見られます。
形式 | 番台 | 編成両数 | 備考 |
6000系 | 00番台 | 8両編成 | 6004F登場時は6両編成だが、車番体系に合わせた中間2両が増備されて8両編成化。 |
10番台 | 6両編成 | 6016Fは2両編成 | |
20番台 | 2両編成 | 6026Fは4両編成 | |
7000系 | 00番台 10番台 |
8両編成 | |
20番台 | 6両編成 | ||
30番台 | 2両編成 | ||
7300系 | 00番台 | 8両編成 7両編成 |
・7300Fと7301F登場時は6両編成だが、車番体系に合わせた中間2両が増備追加されて8両編成になっている。 ・登場時7両編成は7306Fのみ。 ・7307F(6両編成)は7327F(2両編成)とセットで増備された。 |
10番台 | 6両編成 | 7310Fのみ。 | |
20番台 | 2両編成 | ||
8000系 | 00番台 | 8両編成 | 8001F登場時は6両編成だが、車番体系に合わせた中間2両が増備されて8両編成化。 |
20番台 | 6両編成 | 8020Fのみ。後に車番体系に合わせた中間2両が増備されて8両編成化。 | |
30番台 40番台 |
2両編成 | ||
8200系 | 00番台 | 2両編成 | ラッシュ時増結用の限定目的 |
8300系 | 00番台 | 8両編成 7両編成 |
|
10番台 | 6両編成 | ||
30番台 | 2両編成 |
ただし、いずれも製造時の割り振りです。後年になって組成変更や改番が発生し、現在の編成から照らし合わせると齟齬が発生している様に見えます。
尚、9000系・9300系と1000系・1300系は8両固定編成のため、十の位は製造順で割り当てられています。
1000系・1300系の車番割り振り
しかし、1000系・1300系については、9000系・9300系までに採用された従来の車番体系とは異なります。
車番体系に則って車番を割り振った場合と、実際の車番の差異を表にしてみました。
1000系 | Tc | M | M’ | T | T | M | M’ | Tc | |
千の位 | 1xxx | 1xxx | 1xxx | 1xxx | 1xxx | 1xxx | 1xxx | 1xxx | |
百の位 | 先頭車 | x0xx | – | – | – | – | – | – | x1xx |
中間車 | – | x5xx | x6xx | x5xx | x5xx | x5xx | x6xx | – | |
十の位 | 電動車 | – | xx0x~xx4x | xx0x~xx4x | – | – | xx0x~xx4x | xx0x~xx4x | – |
付随車 | xx5x~xx9x | – | – | xx5x~xx9x | xx5x~xx9x | – | – | xx5x~xx9x | |
一の位 | xxx0~ | xxx0~ | xxx0~ | xxx0~ | xxx0~ | xxx0~ | xxx0~ | xxx0~ | |
車番付与規程の車番 | 1050 | 1500 | 1600 | 1550 | 1560 | 1510 | 1610 | 1150 | |
実際の車番 | 1000 | 1500 | 1600 | 1050 | 1150 | 1550 | 1650 | 1100 |
1300系 | Tc | M | M’ | T | T | M | M’ | Tc | |
千の位 | 1xxx | 1xxx | 1xxx | 1xxx | 1xxx | 1xxx | 1xxx | 1xxx | |
百の位 | 先頭車 | x3xx | – | – | – | – | – | – | x4xx |
中間車 | – | x8xx | x9xx | x8xx | x8xx | x8xx | x9xx | – | |
十の位 | 電動車 | – | xx0x~xx4x | xx0x~xx4x | – | – | xx0x~xx4x | xx0x~xx4x | – |
付随車 | xx5x~xx9x | – | – | xx5x~xx9x | xx5x~xx9x | – | – | xx5x~xx9x | |
一の位 | xxx0~ | xxx0~ | xxx0~ | xxx0~ | xxx0~ | xxx0~ | xxx0~ | xxx0~ | |
車番付与規程の車番 | 1350 | 1800 | 1900 | 1850 | 1860 | 1810 | 1910 | 1450 | |
実際の車番 | 1300 | 1800 | 1900 | 1350 | 1450 | 1850 | 1950 | 1400 |
1000系・1300系では、6300系以来となる、制御車が先頭車両で電動車が中間車となる構成を採用しています。従来の車番体系に沿って採番すると、1000系・1300系のトップナンバーは1050F・1350Fとなるはずですが、1000系・1300系のトップナンバーは1000F・1300Fです。
従来の車番体系だと、阪急電鉄公式Twitterでも述べている通り、中間車の車番が枯渇してしまいます。そのため、大量配備を見据えて車番枯渇問題の対策を施した車番体系になっています。
共通予備の車番を使う手段もあったかもしれませんが、敢えて使わなかったのは、8200系のようなバリエーションの増備を見据えたためでしょうか(実際にやるかは不明ですが)。
編集後記
どこの鉄道会社も車番枯渇問題は避けて通れないのね😺💧
関連リンク
参考文献
『阪急電車』山口益生著 JTBパブリッシング