日本初の「カーボン・ニュートラル・ステーション」として開業しましたが、開業10年で高架化が決定された阪急京都線の摂津市駅。今後の立体交差事業において、仮駅・仮線を設置して段階的に高架化されるため、現在の摂津市駅の駅舎はいずれ無くなります。
ところで、この摂津市駅、少し駅ホームを見渡してみると、上りホームと下りホームで様子が異なります。いったい、何故なのでしょうか?
摂津市駅のホームの様相
摂津市駅の1号線と2号線では、ホームの様相が大きく異なります。
まずは1号線(京都河原町・嵐山方面)の風景。
どこにでもありそうな普通のホームです。
こちらは2号線(大阪梅田・天下茶屋方面)の風景。
パッと見た印象だと、2号線(大阪梅田・天下茶屋方面)が開放的になっている印象を受ける方が多いと思います。
そして、意識してホームを見てみると、大きくは次の様な差異が見られます。
号線 | 方面 | ホーム法面 | 改札法面 | 駅名標 |
---|---|---|---|---|
1 | 京都河原町・嵐山 | 壁・すりガラス | 壁・すりガラス | 壁の一部 |
2 | 大阪梅田・天下茶屋 | 柵・緑化 | 透明ガラス | 自立式 |
どうして、摂津市駅は1号線・2号線ホームで異なる様相になっているのでしょうか?
摂津市駅を境界とした南北の違い
摂津市駅南北の状況
現在も再開発中の摂津市駅周辺ですが、駅の南北で状況が異なります。
Googleマップの航空写真を見て頂ければわかると思いますが、再開発が進んでいる摂津市駅の南側は、駅正面にロータリーがあり、ロータリーから南に向かうとコミュニティプラザやマンションが並んでいます。
一方、摂津市駅の北側は線路のすぐそばに民家がたくさんあります。駅と民家の一番近いところでは、その距離が約2.5mで、駅と民家が隣接している状態です。
もちろん、阪急は、摂津市駅設置にあたって事前調査を実施します。その調査結果をもって、1号線ホームは駅の北側の民家に配慮した設計を摂津市側に提案しています。
阪急が提示した設計案に、摂津市側は概ね了解しますが、「(環境都市というモデル目指した)まちづくりの事業に参画するにあたって、阪急側の取り組みのアピールは何なのか?」ということを盛り込んで欲しかったらしく、改めて、
- 駅構内の緑化や木材を全面的に使用した人と自然に優しいデザイン
- 自然環境や周辺環境に配慮したデザイン
という要望を阪急側に出しています。
高架化前提で設置する駅という事は水面下で協議されており、費用を極力抑えたいので、流石に木造は採用されませんでしたが、緑化と環境配慮のデザインは盛り込まれています。
1号線ホーム(北側:京都河原町・嵐山方面)
1号線ホームは民家と隣接しているため、民家に配慮して壁を設けています。
壁を採用した理由は、
- ホームから民家が見えない様にする
- 電車の騒音や放送が駅の外に出来るだけ漏れない様にする
の2点です。
尚、阪急神戸線の夙川駅と同じく、すりガラスの縦長窓が2つずつ並んでおり、ホーム屋根の天窓以外からも、出来るだけ外界の光を取り入れるようにしていますが、ホームの外は見えない様になっています。
改札もホームと同様に、壁にすりガラスの窓が2つ並んでおり、駅舎から隣接している民家が見えないようになっています。
そして、ねこがいます。
2号線ホーム(南側:大阪梅田・天下茶屋方面)
1号線ホームに対して2号線ホームは開放的です。エレベーターやトイレ部分以外に壁はありません。開放的なデザインに加えて、摂津市側の要望にあった緑化が盛り込まれています。
また、改札は透明ガラスになっており、南側ということもあって日中時間帯は日光が十分に入ります。
しかし、ねこはいません。
駅名標の違い
もう一つ興味深いのが駅名標です。
1号線ホーム(京都河原町・嵐山方面)の駅名標は壁に埋め込まれています。
一方、2号線ホーム(大阪梅田・天下茶屋方面)の駅名標は自立型です。
1号線ホームと2号線ホームの駅名標の違い、先ほどのホーム法面の差異と関係してきます。
1号線ホーム法面は、民家のプライバシーと騒音に配慮して壁になっています。その壁を利用して、駅名標が設置されています。
一方、2号線ホームは、トイレやエレベーター部分以外には壁が無く、日光を取り入れる開放的なコンセプトのため、自立型の駅名標がベストということが分かります。
編集後記
高架化前提で建設された駅だから、最低限の構造になってると思ったけど、意外と工夫が盛り込まれてるわね😺
関連リンク
摂津市議会 駅前等再開発特別委員会 南千里丘まちづくりについて(平成19年10月25日開催)
摂津市議会 駅前等再開発特別委員会 南千里丘まちづくりについて(平成20年9月2日開催)