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車両ブランドとは?

鉄道における車両ブランドとは、鉄道車両製造メーカーが手掛ける車両のブランドのこと。現在、日立製作所の「A-train」、川崎車両(元・川崎重工業車両カンパニー)の「efACE」、総合車両製作所(J-TREC)の「sustina」がある。

日本車輌製造の「日車式ブロック工法」は製造方法であり車両ブランドではないが、2021年11月24日~26日で開催された「第7回鉄道技術展2021」で、新ブランド「N-QUALIS」(エヌクオリス)を発表している。

車両ブランドとは?

鉄道における車両ブランドとは、鉄道車両を製造するメーカーが手掛けているブランドのことです。鉄道ファンの多くは耳にしたことがある大手車両メーカー各社は、車両ブランドを持っています。

メーカー ブランド名 車体材質 登場時期
日立製作所 A-train
(エートレイン)
アルミニウム合金 1999年
(JR九州815系)
川崎車両
(前身の川崎重工業車両カンパニーが開発)
efACE
(イーフェイス)
アルミニウム合金
オールステンレス
2008年
(京阪3000系)
総合車両製作所(J-TREC) sustina
(サスティナ)
オールステンレス 2013年
(東急5050系サハ5576)
日本車輌製造 N-QUALIS
(エヌクリオス)
オールステンレス1 2021年
(JR東海315系)

他に主要な車両メーカーと言えば、近鉄をはじめ、新幹線・東京メトロ・南海などの車両を製造している近畿車輛が挙げられますが、近畿車輛では車両ブランドを持っていません。

車両ブランドの特徴

鉄道車両製造メーカーが持っているブランドは共通して、鉄道車両単品ではなく、総合的なパッケージとして開発することで、コストダウンと品質の高さを掲げています。

A-train

A-trainは、「環境負荷の低減」「ライフサイクルコストの低減」「今後の熟練者就業人口の減少」への対応というコンセプトのもと、高精度アルミオールダブルスキン構造および自立型モジュール艤装を核とした車体トータルシステムとして、車両の構造と製造方法を抜本的に革新したものです。

その基本構成を、

  • 新接合技術FSW(摩擦攪拌接合)を用いた高精度・高品位アルミダブルスキン構体
  • 完全自立型モジュール内装
  • 中空押出形材と一体成形されたマウンティングレールへのモジュールの締結

としています。簡単に説明すると、

  • ダブルスキン構造のアルミ車体なので騒音が少なくて強度も高い
  • 部品も少なく、シンプルな作りなので車両生産のリードタイムが短縮される
  • ステンレス車体よりもエネルギー消費が少なく経済性に優れている

という点をアピールポイントとしています。

また、A-trainは分解・解体が容易であり、リサイクル性にも優れていることから、登場してからしばらくはエコトレインとも言われていました。

西武・東武・東京メトロ・つくばエクスプレス・阪急などで導入されている他、イギリスや台湾でも導入されています。

efACE

efACEは、「付加価値」「柔軟性」「合理性」のコンセプトで開発された標準型車両です。日本国内と海外でのコンセプトを分けて、会社・地域の実情に合わせた開発を行っています。

基本コンセプト 日本国内 海外
付加価値 安全・快適・意匠・環境 現地生産化
柔軟性 車両のサイズ・用途や材料への適合 設備・調達・工法
合理性 安定した品質・低コスト(経済面) モジュール化

efACEではハモニカ構造を採用したことにより、基本構造をそのままにして鉄道会社が求める車両寸法に対応できることが可能になっています。アルミ車両とステンレス車両で材質は異なりますが、基本的な構造を共通化し、製造過程のコスト低減に結び付けてます。

また、車両の構成材をモジュール化することで、

  • 製造のために広大な専用設備を必要としない(莫大な固定費がかかる)
  • 特定の外部調達先に依存しない(メーカー依存によるリスク回避)

という点でもメリットがあり、車両本体の製造コストだけでなく、車両を構成する原材料や機器・部品の調達もコスト低減につながるための工夫を施しています。

アルミ車両では京阪・東京メトロ・東武・西武などが導入、ステンレス車両ではJR西日本・JR四国・神戸電鉄などが導入しています。

sustina

sustinaは、東急車輛製造時代に培ったオールステンレス車両の技術を更に向上させ、高品質と低コストの鉄道車両を目指したブランドです。

sustinaの名の通り、sustinable(維持・継続)をコンセプトに、

  • 安全性(車体の耐久・耐火)
  • 環境親和性(軽量・リサイクル性・省エネ・長寿命)
  • 高信頼性(高品質・コストパフォーマンス・安定性)

をアピールポイントとしています。

sustinaで目指したものは、

  • 車体の軽量化
  • 外観の向上
  • 構体水密性の強化
  • 艤内装方法の改善

であり、アルミ車両と比べてステンレス車両の弱点を改善することに注力しました。

アルミ車両と同等の軽量化に成功したことや、車内の各部材をモジュール化したことによる製造時のコスト削減とメンテナンス性の向上、車体外部の継ぎ目を無くしたことによりエクステリアも向上させています。

JR東日本を中心に、東急・京王・京急・相鉄・都営浅草線などが導入している他、タイ(バンコク)やフィリピン国鉄といった海外の鉄道でも導入されています。

N-QUALIS

N-QUALIS(エヌクリオス)鉄道技術展2021で日本車輌製造が発表した車両ブランドです。

日本車輌製造が正式にリリース次第、加筆修正を行います。

ブランドの第1号は、JR東海で2022年3月に導入予定の315系。

日本車輌製造はステンレス車両の製造にあたり、日車式ブロック工法を用いて低コストでの開発・導入実績があり、今後、車両ブランドとして知名度が上がることが予想されます。

日車式ブロック工法がステンレス車両の製造方法ではありますが、日本車輌製造ではアルミ車両の製造実績もあるため、N-QUALISでアルミ車両も併せてブランド化されるかも注目です。

商標は2021年8月16日に出願済み(同日に先願権発生)、8月31日に公開し、12月8日現在は出願した商標の登録待ちの状態です。

関連リンク

『日立評論』(2001年8月号)|日立製作所

『日立評論』(2003年8月号)|日立製作所

標準型車両「efACE」の展開|川崎重工業

海外向けステンレス車両のブランド名を「sustina(サスティナ)」に|総合車両製作所

「sustina」国内第1号車両の開発|総合車両製作所

鉄道技術展2021 – 日本車両の新ブランド「N-QUALIS」第1号は315系|マイナビニュース

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注釈

  1. 日本車輌製造としてはアルミニウム合金の車両も取り扱っているが、N-QUALISブランドとして今後取り扱うかは不明。