3代目京急600形は京浜急行電鉄の通勤形車両。ツイングルシートと呼ばれる可動式座席が備えられたクロスシートの地下鉄線直通車両として登場し、ネタ的にも一世を風靡したが、主要機器が京急1500形VVVF車両とほぼ同じだったり、結局はロングシート化されたりと色々と話題を呼んだ。
京急600形(3代目)超概説
3代目京急600形は1994年から登場した京浜急行電鉄の通勤形車両です。
1994年当時、地下鉄への直通対応車両としては珍しい、クロスシートを備えた車両として注目され、2人掛け席が1人掛け席に転換可能なツイングルシートと呼ばれる機構を持つなど、話題を呼びました。
1次車~3次車と4次車で仕様が異なり、4次車ではツイングルシートを廃止したクロスシート、シングルアームパンタグラフの採用、メディアルトラン1などの仕様変更を行っています。
1次車~3次車のツイングルシートは、その構造から保守が難しくなるとされたため、ロングシート化を受けており、営業車両でツイングルシートを見ることは出来ませんが、神奈川新町の育成センターにツイングルシートの原型が残っています2。
諸元
製造年 | 1994年~1996年 |
製造数 | 88両 |
MT比 | 4M(4両編成1次車~3次車) 6M2T(8両編成1次車~3次車) 2M2T(4両編成4次車) 4M4T(8両編成4次車) |
車体 | アルミニウム合金 |
台車 | ダイレクトマウント式ボルスタ台車 (軸ダンパ付空気ばね車体直結軸梁支持方式) |
最高速度 | 120km/h(営業運転)、130km/h(設計) |
加速度 | 3.5km/h/s(1~3次車) 3.3km/h/s(4次車) |
減速度 | 4.0km/h/s(常用)、4.5km/h/s(非常) |
制御方式 | GTO-VVVFインバータ制御 |
全長 | 18,000mm |
全幅 | 2,830mm |
全高 | 4,020mm 4,050mm(パンタ車) |
機器構成は1500形のVVVF車両とほぼ同じですが、台車が1500形で使用されていた円筒案内支持方式から軸梁式台車に変更されていたり、油圧式車端ダンパ(きしみ音が不評で後に撤去)が装備されるなど、多少なりとも差異は見られます。
1~3次車と4次車以降でMT比の変更と起動加速度の低下(3.5km/h/s→3.3km/h/s)となっていますが、主電動機の定格出力の上昇(120kW→180kW)と制御方式の変更(1C8M制御→1C4M制御)によるものです。
また、608編成は登場当初、主要機器が東洋電機製造と三菱電機で混在(浦賀寄り4両が東洋、品川寄り4両が三菱)していましたが、608編成浦賀寄り4両と651編成の機器を交換して、全て三菱電機製に統一されています。
運用
直通前提で設計されたことから汎用性は高く、幅広い運用に就きます。
8両編成は、京急線内でエアポート快特・快特・特急・エアポート急行の優等種別に就き、直通先の都営浅草線・京成線・北総線、アクセス特急として成田スカイアクセス線の運用にも就いています。
4両編成は、普通運用の他に、12両編成の増結車両としての運用や大師線の運用にも入ることがあります3。
ちなみに、登場時、3ドアのうち中央扉を締め切って、2ドア車として2000形と同じ、日中の快特運用に就くこともありましたが、その機構が乗客の混乱を招くこともあって中止になっています。
デザイン
バルーンフェイスと呼ばれる、京急車両のイメージの原型の車両です。
丸みを帯びた三次元曲面、非常貫通扉は正面向いて左端に設置、ワイパーカバーを設置するなど、1500形とは大きく異なる様相になっています。このデザインは後に登場する2100形、2代目1000形でも採用されますが、2代目1000形1800番台で怪しくなっています。
現在のカラーリングは、車両正面は全体が赤でワイパーカバー部がアイボリー。車両側面も全体が赤で、窓周りがアイボリーに塗装されています。デビュー当時はワイパーカバーはグレーで、車両形式のスリット打ち抜き加工がありませんでした。
車内風景については、オンタイム様(個人サイト様)とStyle-Train Graphics-様(個人サイト様)にてお楽しみください。
京急600形(3代目)編成表
記号 | 意味 |
VVVF | VVVFインバータ |
SIV | 静止形インバータ |
CP | 電動空気圧縮機 |
◇ | 菱形パンタグラフ |
< > | シングルアームパンタグラフ |
M | 電動車 |
T | 牽引車 |
c | 制御車 |
p | パンタグラフ車 |
u | 浦賀 |
s | 品川 |
8両編成
1次車~3次車
←浦賀・三崎口 | 品川・泉岳寺→ | ||||||||
8両編成 | デハ600 | デハ600 | サハ600 | サハ600 | デハ600 | デハ600 | デハ600 | デハ600 | 製造次 |
VVVF | SIV CP |
CP | SIV | VVVF | SIV CP |
VVVF | SIV CP |
||
◇ | ◇ ◇ | ◇ | |||||||
M1c | M2 | Tu | Ts | M1′ | M2′ | M1 | M2c | ||
601編成 | 601-1 | 601-2 | 601-3 | 601-4 | 601-5 | 601-6 | 601-7 | 601-8 | 1次車 |
602編成 | 602-1 | 602-2 | 602-3 | 602-4 | 602-5 | 602-6 | 602-7 | 602-8 | 1次車 |
603編成 | 603-1 | 603-2 | 603-3 | 603-4 | 603-5 | 603-6 | 603-7 | 603-8 | 2次車 |
604編成 | 604-1 | 604-2 | 604-3 | 604-4 | 604-5 | 604-6 | 604-7 | 604-8 | 2次車 |
605編成 | 605-1 | 605-2 | 605-3 | 605-4 | 605-5 | 605-6 | 605-7 | 605-8 | 2次車 |
606編成 | 606-1 | 606-2 | 606-3 | 606-4 | 606-5 | 606-6 | 606-7 | 606-8 | 3次車 |
607編成 | 607-1 | 607-2 | 607-3 | 607-4 | 607-5 | 607-6 | 607-7 | 607-8 | 3次車 |
4次車
←浦賀・三崎口 | 品川・泉岳寺→ | ||||||||
8両編成 | デハ600 | デハ600 | サハ600 | サハ600 | デハ600 | デハ600 | デハ600 | デハ600 | 製造次 |
VVVF CP |
SIV | VVVF | VVVF CP |
SIV | VVVF CP |
||||
< > | < > | ||||||||
Muc | T | Tp1 | Mu | Ms | T | Tp1 | Msc | ||
608編成 | 608-1 | 608-2 | 608-3 | 608-4 | 608-5 | 608-6 | 608-7 | 608-8 | 4次車 |
4両編成
←浦賀・三崎口 | 品川・泉岳寺→ | ||||
4両編成 | デハ600 | サハ600 | サハ600 | デハ600 | 製造次 |
VVVF CP |
SIV | VVVF CP |
|||
< > | |||||
Muc | T | Tp2 | Msc | ||
651編成 | 651-1 | 651-2 | 651-3 | 651-4 | 4次車 |
652編成 | 652-1 | 652-2 | 652-3 | 652-4 | 4次車 |
653編成 | 653-1 | 653-2 | 653-3 | 653-4 | 4次車 |
654編成 | 654-1 | 654-2 | 654-3 | 654-4 | 4次車 |
655編成 | 655-1 | 655-2 | 655-3 | 655-4 | 4次車 |
656編成 | 656-1 | 656-2 | 656-3 | 656-4 | 4次車 |
関連リンク
京急600形608編成が試運転|鉄道ニュース|2012年8月1日掲載|鉄道ファン・railf.jp
京急大師線に600形が入線|鉄道ニュース|2019年1月9日掲載|鉄道ファン・railf.jp
参考資料
『鉄道ピクトリアル No.935 2017年8月号臨時増刊 【特集】京浜急行電鉄』 株式会社電気車研究会