阪急9300系は、2003年から2010年にかけて製造された、阪急京都線の特急用車両です。6300系の後継車両として8年間で11編成88両が製造され、阪急京都線の主力として活躍しています。
さて、そんな阪急9300系ですが、ちょっと不思議な点があります。何が不思議かと言うと、9300系の9303F以降の車両が重いということです。
阪急9300系各編成の重量
まずは、阪急9300系の各編成および車両の重量をご覧下さい。
編成 | Mc1 | T1 | T2 | T2 | T2 | T1 | M1 | Mc2 | 編成重量 | 編成重量差 (9300F比) |
9300F | 9300 | 9850 | 9870 | 9880 | 9890 | 9860 | 9800 | 9400 | 233.8t | – |
35.7t | 28.4t | 24.5t | 24.5t | 24.5t | 28.4t | 33.7t | 34.1t | |||
9301F | 9301 | 9851 | 9871 | 9881 | 9891 | 9861 | 9801 | 9401 | 239.2t | 5.4t |
35.8t | 29.3t | 25.5t | 25.5t | 25.5t | 29.3t | 33.8t | 34.5t | |||
9302F | 9302 | 9852 | 9872 | 9882 | 9892 | 9862 | 9802 | 9402 | 239.2t | 5.4t |
35.8t | 29.3t | 25.5t | 25.5t | 25.5t | 29.3t | 33.8t | 34.5t | |||
9303F | 9303 | 9853 | 9873 | 9883 | 9893 | 9863 | 9803 | 9403 | 250.5t | 16.7t |
37.3t | 30.8t | 26.9t | 26.9t | 26.8t | 30.7t | 35.3t | 35.8t | |||
9304F | 9304 | 9854 | 9874 | 9884 | 9894 | 9864 | 9804 | 9404 | 252.2t | 18.4t |
37.6t | 31.0t | 27.0t | 27.0t | 27.0t | 31.0t | 35.6t | 36.0t | |||
9305F | 9305 | 9855 | 9875 | 9885 | 9895 | 9865 | 9805 | 9405 | 250.0t | 16.2t |
37.2t | 30.7t | 26.8t | 26.9t | 26.8t | 30.7t | 35.2t | 35.7t | |||
9306F | 9306 | 9856 | 9876 | 9886 | 9896 | 9866 | 9806 | 9406 | 252.5t | 18.7t |
37.5t | 30.9t | 27.0t | 27.0t | 26.9t | 30.8t | 36.4t | 36.0t | |||
9307F | 9307 | 9857 | 9877 | 9887 | 9897 | 9867 | 9807 | 9407 | 253.0t | 19.2t |
37.4t | 30.8t | 27.0t | 27.0t | 27.1t | 31.0t | 36.7t | 36.0t | |||
9308F | 9308 | 9858 | 9878 | 9888 | 9898 | 9868 | 9808 | 9408 | 250.8t | 17.0t |
37.3t | 30.8t | 26.9t | 26.9t | 26.9t | 30.8t | 35.4t | 35.8t | |||
9309F | 9309 | 9859 | 9879 | 9889 | 9899 | 9869 | 9809 | 9409 | 250.1t | 16.3t |
37.2t | 30.8t | 26.8t | 26.9t | 26.7t | 30.6t | 35.4t | 35.7t | |||
9310F | 9310 | 9950 | 9970 | 9980 | 9990 | 9960 | 9810 | 9410 | 249.4t | 15.6t |
37.1t | 30.7t | 26.7t | 26.8t | 26.7t | 30.6t | 35.2t | 35.6t |
いずれも製造当時の重量です(改造工事が施されているため、現在の重量は不明)。
9300F基準で各編成を比較すると、9303Fから編成重量が15トン以上増加しています。編成内の特定の車両だけというわけでは無さそうで、バランスよく(?)重量増加となっています。
もちろん、9301F・9302Fでも編成重量が5.4トン増えてますが、9303F以降と比べて3分の1です。
何故、重量が増えたのか?
結論から申し上げますと、9303Fから重量が増えた明確な理由は不明です。ただし、9303F以降の仕様変更を見ていくと、重量増加の要因がおおよそ推測出来ます。
- 行先・種別表示器の変更(方向幕→LED)
- 車内案内表示器の関連機器の変更(LED→LCDモニタ)
- ロングシートの背もたれ嵩上げ
- パワーウィンドウの設置
- アルミ面積の増加
1両あたりでは微々たる増加かもしれませんが、それぞれの要因が積み重なり、9303F以降の編成重量の増加に繋がっていると考えられます。
行先・種別表示器の変更(方向幕→LED)
9303Fから外観の大きな変化は、行先・種別表示器です。9300F~9302Fでは方向幕を採用していましたが、9303F以降ではLEDを採用しています。
LED表示器自体の重量はそれほど重いものとは考えられませんが、LED化に伴い、表示器に関連する電装機器・配線などが増えた可能性が考えられます。
車内案内表示器の関連機器の変更(LED→LCDモニタ)
9303Fからの変更点で、ドア上の車内案内表示器がLEDからLCDに変更されています。
これも行先・種別表示器のLED化と同じで、LCDモニタ単体ではそれほどの重量はありませんが、関連する電装機器や配線などが増えた結果、重量増の一因になっていると考えられます。
ロングシートの背もたれ嵩上げ
9303Fからの変更点で、ロングシート背もたれが高くなっています。9300Fから9302Fまでは、ロングシートの背もたれが低かったのですが、乗り心地の向上を目的として背もたれを高くしました。
オンタイム様が阪急9300系の車内考察記事を書かれており、背もたれを比較した写真を掲載しているので、是非ご覧になって下さい。
パワーウィンドウの設置
9300系9300F~9302Fでは、窓の開閉が出来ない固定式でしたが、9303Fからは車端部の窓がパワーウィンドウで開閉可能になっています。
手動開閉可能な窓であれば、窓の側面にスライド溝を設ければおしまいですが、パワーウィンドウ機構を備えたことが重量増加に繋がっていると考えられます。
アルミ面積の増加
9300Fから9302Fまで、側面窓の高さが1040mmでしたが、9303F以降で990mmへと寸法が変更されています。つまり、その分だけアルミの面積が増えていることになります。
中島硝子工業株式会社のホームページによると、若干、ガラスの方が軽いということなので、9303F以降におけるアルミ面積増加分だけ、重量増加が考えられます。
結局のところは不明…
9300系の9300F~9302Fと9303Fの変更点を並べてみましたが、インパクトがある重量増加要因はありません。
とは言え、9303Fから採用された仕様の個々の重量増加によって、編成あたり約15トンの増加に繋がっていると考えるのが妥当かなと。
例えば、行先・種別表示器のLED化と車内案内表示器のLCD化については、装置単体で見ると重量増加の要因になりにくいです。しかし、付随する関連機器など、目に見えにくい部分の機器追加要因が発生すると、重量増加に繋がります。
個々の要因が積み重なって、結果的に9303Fの重量増加になっていると考えられますが、結局のところ、真相は闇の中です。
編集後記
…やせなきゃ😺💦
参考資料
『鉄道ピクトリアル No.837 2010年8月臨時増刊号 【特集】阪急電鉄』 株式会社電気車研究会