実際に聞いてみた
というわけで、ダメもとで実際に聞いてみました。
今回は阪急百貨店での逸話なので、先述した書籍に記載がない事を伝えた上で、阪急百貨店様に確認したところ、
阪急百貨店にお問い合わせいただいております「ソーライス」についてですが、私もエピソードとして聞いたことはございますが、お調べしたところ明確に言及している資料はございませんでした。
ご指定の年代に関する資料(ソーライスに関する資料)ですと、弊社よりも阪急文化財団様の方が所持されている可能性があるかと思います。ー阪急百貨店様からの回答
と、回答を頂きました(回答ありがとうございます)。
なので、今度は阪急文化財団様に確認したところ、
同様のご質問(ソーライスの話)をたびたび受けるのですが、お調べいただいたとおり、社史や小林一三自身が書いた本のなかでは、小林一三のソーライスの逸話についての記述は、現在のところ確認できておりません。
ー阪急文化財団様からの回答
と、回答を頂きました(回答ありがとうございます)。そういう質問あるんですね…。
阪急百貨店様および阪急文化財団様に回答頂いた通り、「確認できていない」とのこと。つまり、ソーライスの話なのに、ソース無しということです。
そもそも、何でソーライスの話が出て来たの?
さて、では何でソーライスの話が出て来たのかと言うと、阪急文化財団様への問い合わせの回答にヒントがありました。
すでにご確認いただいた情報かもしれませんが、「暮しの手帖」1964年12月号中の「まいどおおきに」という記事の中にある言説によって広まったものなのかもしれません。
なお、この記事は花森安治著『一銭五厘の旗』という単行本にも収録されているようです。ー阪急文化財団様からの回答
念のため、『一銭五厘の旗』を確認したところ、確かに、それらしき記述がありました。
簡単に説明すると、
- 昭和5、6年あたりの不況でサラリーマンは昼飯にも困っていたが、百貨店の食堂のライスに目を付けた。
- ライスだけなら5銭と安く、ソースをかけて食べれば腹も満たされる。
- ライスだけを注文し、ソースだけかけて食べるのが流行るが、百貨店側は客が多いのに売上げが出ないので、ライスのみ注文禁止の貼り紙を出す。
- しかし、ある日の新聞で、阪急百貨店が「当店はライスだけのお客さまを、喜んで歓迎いたします。」と広告を出したので、阪急百貨店にライスのみの注文する客がたくさん来た。
- 小林一三氏が自ら、来てくれることに感謝して、頭を下げに客席を回った。
というもの。
確かにいい話ですし、現在、流布されているソーライスの話の原型の様に考えられます。1964年の「暮しの手帖」よりも古い媒体が無さそうなので、これ以上は遡ることが難しいです。