ターボ君と呼ばれている京成3600形3668編成。
4両編成で全電動車に加えてVVVF化済という、3600形の完全究極体の様な編成が金町線で頑張っています。
3600形は老朽化による置き換えが進み、2021年時点で、ファイヤーオレンジにリバイバル塗装をされた3688編成と3668編成のターボ君しか残っていません。6両編成の3688編成は廃車が近いと考えられますが、ターボ君のある役割から、当分は引退出来そうにありません。
ターボ君のお仕事
ターボ君の役割は2つあります。
- 金町線の運用
- 新造車両を総合車両製作所(J-TREC)の横浜事業所から牽引
まず4両編成ということで、普段は金町線の運用に就いています。京成高砂と京成金町をひたすら往復していますが、大事なお仕事です。
そして、ターボ君ならではのもう一つのお仕事は、新造車両を総合車両製作所(J-TREC)の横浜事業所から牽引することです。厳密に言えば、新形式がJ-TRECで落成された1本目の編成の牽引です。
京急線内に入るためには先頭電動車という条件が必須です。また、牽引するためにも、4両編成であることが必須です。J-TRECで製造された8両編成をそのまま牽引するのではなく、3668編成4両+新造車3両(もしくは新造車2両)という形で、京成線まで牽引します。
京成所属車両のうち、京急線から京成線に牽引できるのは、現時点でターボ君こと3668編成しか存在しません。
ターボ君の後継車両がいない
3668編成は製造から30年以上経過しており、引退も考えられる車齢です。
しかし、ここでターボ君を引退させた場合、京急線から京成線に牽引できる車両が無くなってしまうという事態に陥ってしまいます。
3668編成が京成線から京急線に牽引できる唯一の車両であり、他にターボ君と同じ役割を担うことが出来る編成が存在しないため、代替手段を打たない限り、ターボ君こと3668編成は引退することが出来ません。
ターボ君の代替をどうやって生み出すか
とは言え、いつまでもターボ君を延命させることも出来ません。先に引退している3600形の備品を抜き取って、現存する3600形のための予備部品は確保出来ると考えられますが、車体の劣化によって衝突事故が発生した場合の耐久性も懸念材料です。
そうなると、ターボ君こと3668編成の代替となる車両を生み出すしかありません。条件としてはターボ君の役割を担える車両、つまり、
- 4両編成であること(金町線の運用に就くため)
- 先頭電動車であること(京急線からの牽引のため)
という条件を満たす必要があります。
その条件を満たすために、手段としては以下が候補となります。
- 先頭電動車の4両編成を新造
- 先頭電動車の4両編成を組成(既存車両から)
- 京急から1500形を譲り受ける(奥の手)
先頭電動車の4両編成を新造
まずは先頭電動車の4両編成を新造するパターンです。
ターボ君の様に全電動車にするわけではなく、先頭電動車にすれば、京急線内に入線出来ます。
ただし、一番お金がかかります。
京成では京成グループ標準車両として3000形と3100形を製造しています。標準と言う字面だけ見ると4両編成も3000形もしくは3100形に準拠して製造出来そうな気もしなくもないですが、3000形に関しては8両編成or6両編成での設計となっているので、4両編成を製造するとなると、改めて設計する必要があります(中間車抜いて動くのならそれでも良いとは思いますが…)。
ターボ君の代替を用意するために再設計して新造すると言うのは、コストを考えると厳しいかもしれません。
先頭電動車の4両編成を組成(既存車両から)
次に、既存車両から先頭電動車の4両編成を組成するというパターン。
かくいうターボ君も6両編成から組成を変更して4両編成になっているので、同じように8両編成or6両編成から中間車を引っこ抜いて4両編成を組成します。
例えば、3600形の後に登場した3700形などをターゲットに考えてみると割とありかもしれません。先頭電動車で京急線内には確実に入れます。
ただし、機器配置に懸念が生じます。
単純に先頭2両目までを引っこ抜いて4両編成を組成すると、全電動車になります。3700形は8両編成・6両編成ともに両端の先頭から数えて3両目に補助電源装置が搭載されているので、全電動車4両編成を組成すると、補助電源装置が無い状態になってしまいます。
また、パンタグラフは両端の先頭2両目に搭載していることから、先頭2両目のどちらかの電動車は諦めて、補助電源装置を搭載している中間車を組み込む必要が出てきます。
なので、勝手に考えて見ました。
8両編成 | 3700形-8 M2c |
3700形-7 M1 |
3700形-6 T |
3700形-5 M1′ |
3700形-4 M2 |
3700形-3 T |
3700形-2 M1 |
3700形-1 M2c |
機器 | 空気圧縮機 | VVVF | 補助電源装置 | VVVF | 空気圧縮機 | 補助電源装置 | VVVF | 空気圧縮機 |
4両編成① | 3700形-8 M2c |
3700形-7 M1 |
3700形-2 M1 |
3700形-1 M2c |
単純に先頭2両で4両編成を組成すると補助電源装置が無くなる。 | |||
機器 | 空気圧縮機 | VVVF | VVVF | 空気圧縮機 | ||||
4両編成② | 3700形-8 M2c |
3700形-7 M1 |
3700形-6 T |
3700形-1 M2c |
無理くり全機器が揃うようにしたところで正常に動くのかは不明。 改造工事が必要? |
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機器 | 空気圧縮機 | VVVF | 補助電源装置 | 空気圧縮機 |
上の表の「4両編成②」であれば、機器自体は揃いますが、果たしてそれで動くのかどうかは未知数です。
京急から1500形を譲り受ける(奥の手)
奥の手ですが、引退しそうな1500形を譲り受けるという手段です。
過去、終夜運転で金町線まで乗り入れていた時期があったので、入線の実績はあります。しかも京急車両なので、何もせずとも先頭電動車です。
ただし、1500形の普通鋼車両は車齢35年。車体の劣化が避けられないので、当然、車体修繕の費用はそれなりに発生します。
加えて、1500形に必要な予備部品を京成が確保出来るのかということも懸念点です。京急でも1500形の予備部品があると思いますが、バリバリ現役の1500形の予備部品を、京成に提供してくれるのかというのも微妙です。
編集後記
奥の手のさらに奥の手…とでも言いますか、京成線への牽引の時だけ、京急にお願いして、4両編成の車両に牽引してもらうという方法もあります。果たして、京急がOKするかは不明ですが。
ただし、ターボ君が引退してしまうと4両編成1本の純減になってしまうので、どのみち、4両編成は組成する必要があります。さて、ターボ君の運命はどうなることやら…