阪急8300系の最終増備編成である8315F。シングルアームパンタグラフや車内にLED式の案内表示器を設置するなど、9300系に引き継がれる要素がいくつかありました。
そんな8315F、登場時は6両編成でしたが、現在は8両編成で運用されています。いったい何故なのでしょうか?
8300系8304Fと8315Fの組成変更
1995年に製造された8300系は、8304Fと8315Fの2編成です。
阪急の車番体系および形式内の法則に則って、8300系の8300番台は8両編成、8310番台は6両編成のため、8304Fは8両編成で、8315Fは6両編成で登場しています。
登場時の8304F | |||||||
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Mc1 | M2 | T1 | T2 | T2 | T1 | M1 | Mc2 |
8304 | 8904 | 8854 | 8954 | 8984 | 8874 | 8804 | 8404 |
登場時の8315F | |||||
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Mc1 | T1 | T2 | T1 | M1 | Mc2 |
8315 | 8865 | 8965 | 8885 | 8815 | 8415 |
…が、現在の8304Fと8315Fはこの様な編成となっています。
現在の8304F | |||||||
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Mc | Tc | Mc1 | T1 | T2 | T1 | M1 | Mc2 |
7326 | 7456 | 8304 | 8854 | 8954 | 8874 | 8804 | 8404 |
現在の8315F | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
Mc1 | M2 | T1 | T2 | T2 | T1 | M1 | Mc2 |
8315 | 8904 | 8865 | 8965 | 8984 | 8885 | 8815 | 8415 |
何が起こったのかというと、簡単に言えば、
- 8304Fから8904と8984を引っこ抜く(1997年)
- 8315Fに8904と8984を編入(1997年)
- ところが8304Fと8315Fが一時的に7両編成に(2001年)
- やっぱり8315Fが8両編成に戻る(2001年)
- 8304Fは7326F(2両編成)と8両編成を組成(2001年)
というわけです。
何故、8304Fの中間車がターゲットになったか明確な理由は不明ですが、8304Fと8315Fの台車が同じ1ということぐらいでしょう。
何故、8315Fを8両固定に?
8両編成で製造した8304Fから中間車を2両引っこ抜いて、8315Fに組み込まれていますが、これはいったい何故なのでしょうか?
あくまでも推測ですが、8315F特有の事情から、8315Fが8両編成化されたと考えられます。
8315Fは8300系の最終増備車で、他の8300系の車両とほぼ差異は無い…わけではなく、
- ビジュアル
- ドア上にLED式車内案内表示器を設置(見えるラジオ)
という、8300系の中でも8315F特有の仕様を持っています。
これは、試作車的な意味合いが強い8200系の仕様の一部を取り入れています。この2つの特徴を生かすために、8304Fから中間車を供出して、8315Fを8両編成化したと考えられます。
シングルアームパンタグラフとビジュアル
8315Fの外観でパッと見て特徴的なのは、やはりシングルアームパンタグラフでしょう。そして前パンタ2ということも相まって、純粋にカッコイイです(個人の感想)。
個人的な記憶ですが、8315Fが登場後に販売されていたグッズやラガールカード、ポスターや各種紙媒体メディアで、8315Fがたびたび掲載されていました3。
ビジュアル的な話と、8304Fが8315Fに中間車を供出したことに何が関係あるのかと言うと、「大阪方の8315Fの顔を隠したくない」ということです。
6両編成の8315Fを8両編成にするのであれば、7300系や8300系の2両編成と連結したら話が早いですが、それでは8315Fの顔とシングルアームパンタグラフが見えなくなります。最新車両はメディア露出やグッズ掲載されることが多く、しかも前パンタなので写真映えします。連結して8両編成を組成する代償として顔が隠れることを避けたかった…と考えられます4。
ビジュアル面を気にするのであれば、8315F用の中間車を新造すれば解決する話ですが、バブル後の財政状況悪化により、新造するよりも、8304Fから引っこ抜いた方が安上がりと判断したのでしょう。実際、6両編成となった8304Fは、7300系7326F(2両編成)と連結して8両編成を組んでいます。
ドア上にLED式車内案内表示器を設置(見えるラジオ)
8315Fには、車内のドア上にLED式車内案内表示器が設置されています。
現在の鉄道車両の車内には当然の様に、停車駅を表示する画面と、ニュースや広告などを表示する画面が設置されています5。
8315FのLED式車内案内表示器は長方形で、そこに停車駅等の列車案内を表示させる仕様です。かつて、列車案内に加えて、「見えるラジオ」が表示されていました。
「見えるラジオ」では、FM大阪のニュースや天気予報などの情報が表示されますが、8315Fが6両編成の場合、「見えるラジオ」が充分に活かせません。何故かというと、6両編成は普通の運用のため、「見えるラジオ」でニュースなどを流しているよりも、停車駅の案内を流している時間の方が長くなります。停車駅が少ない優等列車で「見えるラジオ」を使用する方が、その効果を発揮出来ます。
尚、8304Fから供出された中間車に「見えるラジオ」は設置されていません。そのまま8315Fに組み込まれています。
結局は謎案件
ビジュアル的な話と「見えるラジオ」が要因で、8315Fが8両編成化された可能性はありますが、8315Fが8両編成化された確固たる理由は不明です。
シングルアームパンタグラフどうしても欲しいのであれば、8304Fと8315Fのパンタグラフを入れ替えれば解決しそうですが、パンタグラフの入れ替えは行われていません。
となると、やはり「見えるラジオ」を活かしたいという謎の思いがあったのかもしれませんが、結局のところ謎案件です。
編集後記
不思議な話だけど、やっぱり8315Fはかっこいい😼✨
参考資料
『阪急電車』山口益生著 JTBパブリッシング
『鉄道ピクトリアル No.837 2010年8月臨時増刊号 【特集】阪急電鉄』 株式会社電気車研究会