千葉ニュータウン鉄道。京急・京成・都営浅草線・北総鉄道が行っている相互直通運転の中に、ひっそりと、いや堂々と君臨している会社です。
黄色と水色のカラーを纏った車両や、9100形・シーフライヤーが印象的ですが、車両数は少ないので、沿線に住んでいない人からすると、お目にかかれる機会はそんなに多くありません。
ところで、この、千葉ニュータウン鉄道、いったい何をしている会社なのでしょうか?
千葉ニュータウン鉄道の成り立ち
千葉ニュータウン鉄道は2004年3月16日に京成電鉄が100%出資して設立された会社です。
千葉ニュータウン鉄道のもとをたどると、1975年に設立された、宅地開発公団の鉄道事業からはじまります。
その後、「住宅・都市整備公団法」によって宅地開発公団は解散し、住宅・都市整備公団に業務が継承されますが、住宅・都市整備公団も1999年10月1日に解散し、都市基盤整備公団が業務を継承。
更に、2004年に都市基盤整備公団の都市再生機構への改組に伴って鉄道事業が廃止となりますが、京成電鉄が100%出資して、千葉ニュータウン鉄道が設立されました。
斬新かつ類を見ない千葉ニュータウン鉄道のホームページ
さて、本記事のテーマは、「千葉ニュータウン鉄道が何をしている会社なのか」です。どんな会社なのか、まずは、ホームページを見てみましょう。
これです。他に類を見ない会社ホームページです。
百聞は一見に如かず、実際にご自身の目で見てください。
URLも「https://www.keisei.co.jp/keisei/kanren/7.html」となっており、京成電鉄の関連企業の1ページ扱いになっています。自社ドメインも取得していません。
京成グループの鉄道会社は全てこの様な扱いを受けているわけではありません。参考までに、京成グループのうち、鉄道事業を扱っている各社のURLを見てみましょう。
- 京成電鉄:https://www.keisei.co.jp/
- 新京成電鉄:https://www.shinkeisei.co.jp/
- 北総鉄道:https://www.hokuso-railway.co.jp/
- 成田空港高速鉄道:https://www.narita-kousoku.jp/
- 小湊鉄道:https://www.kominato.co.jp/
- 関東鉄道:https://www.kantetsu.co.jp/
- 筑波観光鉄道:http://www.mt-tsukuba.com/
- 舞浜リゾートライン:http://www.mrc.olc.co.jp/
各社とも独自のドメインを取得しています。しかし、千葉ニュータウン鉄道だけはドメインはおろか、京成電鉄のドメイン内の1ページのみです。
2021年11月現在、従業員数は2人。本社所在地は京成電鉄本社ビルの中にあります。千葉ニュータウン鉄道の社長は京成電鉄の役員が兼務しています。
流石に従業員が2人しかいない会社はペーパーカンパニーと疑うかもしれませんが、安心して下さい。千葉ニュータウン鉄道は、紛れもなく正真正銘のペーパーカンパニーです。
千葉ニュータウン鉄道は何をしているのか?
ところで、本記事のテーマは、「千葉ニュータウン鉄道が何をしている会社なのか」です。いったい、千葉ニュータウン鉄道は何をしている会社なのでしょうか?
結論から言うと、千葉ニュータウン鉄道は何もしていない会社です。
いや、厳密には何もしていないわけではありません。第三種鉄道事業者として線路と車両を保有しています。
保有している線路は、小室駅~印旛日本医大駅の12.5km。
車両は、9100形3編成24両・9200形1編成8両・9800形1編成8両の合計5編成40両を保有しています。
そして、保有している線路と車両ですが、千葉ニュータウン鉄道は使っていません。
北総鉄道に丸投げ?
運行と保守点検は北総鉄道が実施
千葉ニュータウン鉄道は線路と車両を保有していますが、線路の保守点検や車両の運行・保守点検は北総鉄道が行っています。
千葉ニュータウン鉄道は上下分離方式の「下」の会社のため、線路と車両の保有だけしています。上下分離方式の「上」、つまり、運行や保守点検等の実務は北総鉄道が行っています。
つまり丸投げです。
やばい丸投げ
京成電鉄が千葉ニュータウン鉄道というペーパーカンパニーを設立して北総鉄道に丸投げした!…というわけではなく、住宅・都市整備公団千葉ニュータウン線が1984年に開業した際に、住宅・都市整備公団が北総開発鉄道(現・北総鉄道)に業務を委託しています。この時、業務委託なので、一般社会では、まだ大丈夫な丸投げです(一般社会でも多重構造の中抜きとか偽装請負は日常茶飯事ですが)。
1988年には鉄道事業法に則って上下分離方式を採用したため、小室駅~印旛日本医大駅の12.5kmの線路を住宅・都市整備公団を保有し、運行主体が北総開発鉄道になりました。これがやばい丸投げになります。
業務委託の場合、住宅・都市整備公団が北総開発鉄道に対して、業務委託料を払っていました。しかし、上下分離方式を採用したことにより、運行主体である北総開発鉄道が、線路を保有している住宅・都市整備公団に線路使用料を支払うということになりました。
つまり、丸投げしつつ線路使用料を受け取るという横暴極まりない所業にも思えますが、上下分離方式の採用は、千葉ニュータウン事業の不調によって負債が膨らんでいた住宅・都市整備公団に少しでもお金を入れる必要があったからです。
住宅・都市整備公団を引き継いだ都市基盤整備公団になっても何も変わらず、結局、都市再生機構に改組される際に、鉄道事業は廃止。結局、京成電鉄が受け皿になり千葉ニュータウンが設立されました。やばい丸投げも継承して。
編集後記
簡単に言うと、千葉ニュータウン鉄道は何もしていない、北総鉄道に丸投げしている鉄道会社です。
ただし、簡単に「何もしていない」「丸投げ」とは言えず、千葉ニュータウン事業の不調という京成グループが背負っている大きなハンデがあり、そうせざる得なかったという事情もありまました。
関連リンク
京成電鉄成田空港線運賃認可及び北総線運賃に関する質問主意書|衆議院
京成グループ 会社情報(千葉ニュータウン鉄道のページ)|京成電鉄