2024年を目途に阪急にも有料座席指定サービスが導入される予定です。各鉄道事業者では有料座席指定サービスを導入しており、阪急の有料座席指定サービスは後発と呼ばれるポジションになります。
というわけで、今回は、阪急が予定しているモデルはどのようなものになるのかを考えてみます。
有料座席指定サービスのモデル
阪急では創業以来、有料座席指定サービスと言われるものは導入していませんでしたが、2021年度の決算説明会資料において、2024年を目途に有料座席指定サービスを導入すると記載しています。
とは言え、既に有料座席指定サービスは各鉄道事業者で実施されているサービスです。
ザックリですが、指定席(一部・全席)と運行時間(一部時間帯・終日)を分類してみました。
一部座席指定 | 全席指定 | |
一部時間帯 | TJライナー(東武) S-TRAIN(西武) Qシート(東急) |
ウィング号(京急) 京王ライナー(京王) |
終日 | プレミアムカー(京阪) | 専用特急1 |
【注】全網羅が目的で無く、イメージしやすいサービスを記載。 |
阪急が新たに有料座席指定サービスを導入する場合、上の表のどこかに位置するサービスを導入することになります。
そんなわけで、今回は阪急がどのモデルの有料座席指定サービスを導入するのかを考えてみたいと思います。
一部座席指定&一部時間帯
首都圏では一般的になってきた、編成のうち一部車両の座席を、通勤時間帯に有料座席指定サービスとして提供するパターンです。
朝日新聞デジタルの初報に記載されている様に、通勤時間帯のサラリーマン向けサービスとして提供するのであれば、通勤時間帯限定のサービスで事足ります。また、車両の編成の一部だけを座席指定にした場合、最小限の投資で実現する事が可能です。
経営コスト的に考えると、一部座席指定が手っ取り早いですが、通勤時間帯に限定して運行するとなると、通勤時間帯以外で、座席指定用の車両が遊んでしまうというデメリットもあります。
一日中ずっと運行させておいて、通勤時間帯だけ着席保証という方法もありますが、オペレーションが複雑になったり、通り抜けの際に乗客が混乱したりと、課題が多いことも懸念点です。
一部座席指定&終日
終日、編成のうち一部の座席を有料とするパターン。阪急京都線の淀川対岸を走る京阪のプレミアムカーが有名です。
車両のグレード云々は置いといて2、終日運行する上で、車両をどれくらい用意するのかというのが気になるポイントです。
仮に、京阪の実績を参考にするのであれば、まとまった車両数を用意する必要があります。9300系全11編成の一部車両を座席指定車両として提供するパターンも考えられますが、あと2年で全11編成分(11両)も改造 or 新造出来るのかという懸念はあります。
とは言え、終日運行することが出来れば収益源となるでしょうし、京都線で終日運行させるのであれば、日中の大阪~京都間の輸送において、新しい選択肢が広まることはほとんど確実でしょう。
全席指定&一部時間帯
京急のウィング号や京王ライナーの様に、ラッシュ時限定で全席指定の有料座席指定サービスを提供するパターン。
ウィング号は京急2100形が担当しており、オールクロスシートかつ、座席番号が振られているので、通勤時間帯のウィング号運用に座席指定サービスを提供し、それ以外には快特として運用されています。
京王ライナーは京王5000系が担当しており、こちらL/Cカーのため、通勤時間帯の京王ライナー時はクロスシート、それ以外はロングシートで運用しています。
仮に、阪急で全席指定&一部時間帯を提供する場合、手っ取り早いのが、京急のウィング号のパターンです。京都線限定になってしまいますが、9300系はセミクロスシートのため、クロスシート部分に座席番号を振ってしまえばアラ不思議…と言うようなことも出来ます。ただ、クロスシートに限定すると着席数が少ないという点は否めません。
では、「京王5000系みたいなL/Cカーを作ってしまおう」という発想に繋がるかもしれませんが、コスト面で莫大な負担がかかるため、初年度から数年かけて徐々にL/Cカーを増やしていくという計画になります。そして、収益がどれだけあるのか未知数です。
全席指定&終日(≒有料特急)
全席指定で終日運行のパターン。有料特急とほぼイコールの扱いとなります。
大手私鉄で言うところの、ロマンスカー(小田急)、スペーシア(東武)、リバティ(東武)、スカイライナー(京成)、ラピート(南海)、ひのとり(近鉄)など…重箱の隅を楊枝でほじくる様な例外を除いて、いわゆる「有料特急」と言われるものです。
全席指定かつ終日運行の有料特急を阪急が導入する可能性はゼロではないですが、可能性としては極めて低いと考えられます。
デザイン的な話をすると、謎の勢力(上から目線のガチ勢)によるご高説が始まり、「建築限界がー…、車両限界がー、流線形がー…」というアレな感じになってしまうので割愛しますが、2024年というタイムリミットの関係で難しいです。
車両をゼロから設計、資材調達、ダイヤ変更の調整、各種設備の見直し…となると、2年ないし3年では難しいでしょう。並行してサービス設計およびシステム開発3)、プロモーション等々、期限に対してハードルが高いです。
頑張って1編成だけなら間に合うかもしれませんが、車両純増となると留置線の限界を超えてしまいます。また、トイレを付けてしまうと正雀に汚水処理設備を設置する必要がある等、投資額も莫大になり、特急料金の設定金額が高額になってしまいます。
夢がある構想ですが、実現は極めて難しいと考えられます。
各モデルとも一長一短だが、阪急の選択は果たして…?
長々と書きましたが、サマリー形式だとこんな感じです。
一部指定 | 全席指定 | |
一部時間帯 | ・サラリーマン需要はある ・日中時間帯にどうするか |
・ウィング号モデルなら低コスト ・L/Cカーなら長期計画に |
終日 | ・日中にも収益が出る ・まとまった車両数が必要 |
・夢はある ・課題が多すぎる |
阪急がどのモデルを採用して、有料座席指定サービスを提供するのかは、今後の公式発表を待つしかありません。
しかし、阪急は私鉄の経営モデルを創り上げた歴史があります。その企業DNAをフル活用した場合、もしかすると、阪急がこの4つのモデル以外で新たなサービスを提供する可能性があるかもしれません。
編集後記
楽しみね😺✨
関連リンク
阪急阪神ホールディングスグループ 2021年度(2022年3月期)決算・長期ビジョン説明会資料|阪急阪神ホールディングス
阪急電鉄、初の有料特急を検討 リモートワーク対応も|朝日新聞デジタル(初報記事)