京成3100形は、2021年までの計画では、3100形が2022年度に1編成、2024年度に2編成増備される予定でした。しかし、2022年6月30日に公表された、京成電鉄の移動等円滑化取組計画書で、2022年度と2024年度の3100形増備が白紙になりました。
成田スカイスカイアクセス線仕様の3100形が6編成導入されており、まさにこれから本線にも導入されるだろうというタイミングで、3100形の導入計画が変更されたことになります。
今回はこれまでの3100形の導入計画と、どのタイミングで計画変更が発生したのかをたどってみます。
3100形導入計画振り返り
3100形の導入計画を振り返ってみます。
リリース日 | リリース | リンク | 要約 |
2018年5月8日 | 2018年度 鉄道事業設備投資計画 | 🔗 | 2019年度以降に導入する新形通勤型車両の設計に着手 ※この時点では形式および製造数不明 |
2018年6月28日 | 有価証券報告書(2018年度) | 🔗 | 2019年9月完了予定で「鉄道車両新造(16両)」(翌年度計画) |
2019年4月11日 | 成田スカイアクセスに「3100形」を導入します | 🔗 | 2019年(秋)予定 8両2編成 合計16両 |
2019年5月13日 | 2019年度 鉄道事業設備投資計画 | 🔗 | 2019年度導入予定 3100形(8両×2編成) |
2019年6月27日 | 有価証券報告書(2019年度) | 🔗 | 2019年9月完了予定で「鉄道車両新造(16両)」(当年度計画) 2020年7月完了予定で「鉄道車両新造(16両)」(翌年度計画) |
2020年6月26日 | 移動等円滑化取組計画書(2020年度) | 🔗 | バリアフリーに対応した 3100 形を2編成導入(2020 年度) |
2020年6月26日 | 有価証券報告書(2020年度) | 🔗 | 2020年7月完了予定で「鉄道車両新造(16両)」(当年度計画) 2021年9月完了予定で「鉄道車両新造(16両)」(翌年度計画) |
2020年11月10日 | 2020年度 鉄道事業設備投資計画 | 🔗 | 2020年度導入実績報告 |
2021年6月29日 | 有価証券報告書(2021年度) | 🔗 | 2021年11月完了予定で「鉄道車両新造(16両)」(当年度計画) 翌年度計画の記載なし |
2021年6月30日 | 移動等円滑化取組計画書(2021年度) | 🔗 | バリアフリーに対応した 3100 形を 5 編成導入 (2021 年度 2 編成、2022 年度 1 編成、2024 年度 2 編成) 翌年度以降の計画記載あり |
2021年11月4日 | 2021年度 鉄道事業設備投資計画 | 🔗 | 2021年度導入実績報告 |
2022年5月17日 | 2022年度 鉄道事業設備投資計画 | 🔗 | 2022年度新造の記載なし |
2022年6月29日 | 有価証券報告書(2022年度) | 🔗 | 2022年度新造の記載なし |
2022年6月30日 | 移動等円滑化取組計画書(2022年度) | 🔗 | 車両新造計画変更のため記載削除 |
初出は2018年度の設備投資計画です。2018年度時点では「3100形導入」と明記されていませんが、新形通勤車両を導入する旨が記載されており、結果的には3100形が導入されています。
そして、2018年以降、有価証券報告書には翌年度の計画が記載されています。しかし、2021年度の京成公式リリースで矛盾が発生しています。
2021年度公式リリースの矛盾
先ほど掲載した表にもある通り、2020年度までの有価証券報告書では、
- 本年度の計画
- 翌年度の計画
が記載されていました。しかし、2021年度の有価証券報告書では、
- 本年度の計画(2021年度の計画)
だけが記載されています。
ところが、2021年度の移動等円滑化取組計画書には、
バリアフリーに対応した 3100 形を 5 編成導入
(2021 年度 2 編成、2022 年度 1 編成、2024 年度 2 編成)
と、2024年度までの導入計画が記載されています。
つまり、2021年度の有価証券報告書と移動等円滑化取組計画書で、矛盾が生じていることが分かります(しかも日付が1日違い)。
- 2021年度 有価証券報告書:2022年度以降の記載なし
- 2021年度 移動等円滑化取組計画書:2022年度以降の記載あり
少しオーバーかもしれませんが、2022年度以降の計画については、2021年度の有価証券報告書ベースに考えると、既に白紙(導入計画が変更)になっていたと考えられます。
2022年度に白紙確定
結果的に2022年度の有価証券報告書・移動等円滑化取組計画書では、2022年度以降の導入についての記載がなくなりました。
移動等円滑化取組計画書では、「車両新造計画変更」という理由で記載が削除されていますが、計画変更の原因は、新型コロナウィルスによる収益の大幅減少でしょう。
コロナ前の2017年度から、直近の2021年度までの営業収益・営業利益を見てみましょう。
決算 | 営業収益 | 営業利益 |
2018年3月期 (2017年度) |
798億2,400万円 | 153億8,800万円 |
2019年3月期 (2018年度) |
824億3,600万円 | 178億8,000万円 |
2020年3月期 (2019年度) |
824億2,400万円 | 147億4,400万円 |
2021年3月期 (2020年度) |
496億2,700万円 | -119億8,500万円 |
2022年3月期 (2021年度) |
552億5,600万円 | -71億8,900万円 |
2020年度の渡航制限により成田空港利用客が激減してしまったため、営業利益は2020年度決算で赤字転落しています。2021年度に約56億円の収益改善となっていますが、それでも、営業利益は約72億円の赤字です。
恐らく、ロット発注していたであろう3100形6編成については、赤字転落しても導入を進めていますが、収益が好転しない状況が2年続いたため、2022年度以降の3100形導入は見送ったと考えられます。
2022年度の移動等円滑化取組計画書には、「車両新造計画変更」とあり、これをネガティブにとらえれば打ち切りです。計画変更をポジティブにとらえれば、確実に本線用の3100形を導入するため、パワー(というか新造目的の費用)をたくわえていると言えるでしょう。
編集後記
新車は楽しみだけど、こればっかりは仕方ないわね😿
関連リンク
※各年度の設備投資計画・移動等円滑化取組計画書・有価証券報告書については表中のリンク「🔗」参照