京急1000形というのは製造する度に新しい何かを提供します。そのスタンスは京急らしいと言えば京急らしいのですが、その中でも群を抜いて「京急らしさ」が全開になったのが、京急1000形15次車です。
京急1000形15次車
京急1000形15次車は2015年に6両編成が2本、4両編成が2本製造されました。
字面だけ見ると、大したことは無さそうなのですが、15次車に盛り込まれたものがコチラ。
- 1800番台の導入
- 全体にカラーフィルムを貼り付ける(1801編成・1805編成)
- PMSMの搭載(1367編成)
14次車までは製造する度に、バニラエッセンスを加えるとか、隠し味に醤油を使うとかそう言うレベルだったのですが、15次車では、色々と新しいものを加えました。
全体にカラーフィルムを貼り付ける
京急1000形は、6次車以降からステンレス車で製造され、京急伝統の赤とアイボリーの全塗装をやめて、側面には帯状の赤いフィルムが貼られていました。ステンレス車両の導入を機に、コスト削減と環境負荷低減を目的としたためです。
6次車から14次車まで、ステンレスに赤い帯を纏うという新しい京急車両のスタンダードデザインになっていたのですが、15次車1800番台では、全塗装のカラーリングをカラーフィルムで再現しています。
写真を見て頂くと分かりますが、カラーフィルムを側面の全体に貼り付けて、京急車両の伝統的なデザインを再現した格好になりました。
「ステンレス車導入時のコスト削減と環境負荷低減はどこに行ったのか?」という疑問を残したまま、今日も元気に走っています。
PMSMの搭載(1367編成)
1367編成では京急初のPMSMが搭載されました。京急1000形の6両編成は東洋電機製造のIGBT-VVVFインバータを搭載することがスタンダードになっていますが、この1367編成だけ東芝のIGBT-VVVFインバータとPMSMの組み合わせになっています。
まあ、難しい事は抜きにして、とりあえず走行音を聴いてみて、感じて下さい(TOQBOX9000さんの動画)。
聴いたら分かりますが、走行音がとても静かです。
1800番台の導入
京急ファンの間では有名な1800番台は、15次車で導入されました。1800番台は1編成あたり4両で製造し、都営浅草線への直通可能な車両が不足した時に、1800番台を2本くっつけて、都営浅草線直通が可能になるように、中央貫通扉にしています。
京急1000形は一貫してバルーンフェイスですが、そこに中央貫通扉を搭載したことによって、なんとも形容しがたい形状になっています。「もはや、車体色だけが京急1000形であることをかろうじて物語っている」とも言われかねないデザインです。
その後の影響
カラーフィルム
まず、カラーフィルムは17次車でやめました。
「カラーフィルムをやめて銀千に戻ったのかな?」と思いきや、17次車からは全塗装しました。ステンレス車両に。
いやはや、ステンレス車のコンセプトの一つであるコスト低減はどこに行ったのか、という疑問が残りますが、それもまた京急らしさということでしょう。
PMSM
1367編成だけ導入されたPMSMは試験的な導入となっており、以降に製造された1000形にPMSMの搭載はありません。
もしかすると、将来的に導入するかもしれませんが、PMSMは1367編成のみにとどまっている状態です。
もし、都営浅草線内での誘導障害を懸念している場合、京急線内引きこもり運用に限定される新造6両編成にPMSMを搭載するはずですが、16次車で製造された6両の1601編成・1607編成でPMSMを採用していません。とすると、導入コストやメンテナンスの観点で採用を見送っていることも考えられます。
1800番台
16次車で1809編成が中央貫通扉で導入されました。15次車に引き続いての製造ですが、1編成4両のみの製造で、1800番台は一旦ストップとなります。
そして、2021年1月に20次車である1890番台のリリースが発表されます。1800番台をパワーアップさせたフォルムに加えて、トイレ付きのL/Cカーという贅沢なバリエーションが登場しています。
1800番台の登場は画期的でしたが、上位互換…というか別次元にパワーアップしてしまった1890番台が登場しています。
編集後記
余談ですが、15次車で唯一ノーマルなのが1361編成です。いや、ノーマルというか、他の編成の個性が強すぎるというか…
関連リンク
参考資料
『鉄道ピクトリアル No.935 2017年8月号臨時増刊 【特集】京浜急行電鉄』 株式会社電気車研究会