2022年7月29日に公開された『京成グループ長期経営計画「Dプラン」及び中期経営計画「D1プラン」の策定について』で、車両関係では3200形の新形式導入の他に、「スカイライナー車両の増備」が記載されています。
コロナ禍で成田空港の利用が激減し、成田スカイアクセス線が残念なことになっているのは決算や月次営業概況で明らかになっています。
それでもスカイライナーを増備する理由は何なのでしょうか?
中長期計画の概要
では早速、スカイライナー増備の話…の前に、長期経営計画「Dプラン」と、長期経営計画の最初の3ヶ年計画である中期経営計画「D1プラン」について整理します。
長期経営計画「Dプラン」
長期経営計画の期間は、2022年~2030年の9年間です。9年間の中で京成が何を目標にしているのかを簡単に言うと、
- 沿線開発
- 観光振興
- 空港輸送強化
の3つです。
「沿線開発」は、鉄道を軸にした各事業で、京成沿線の地域社会の発展を目指すというものです。
「観光振興」は、沿線の既存観光資源の魅力を上げつつ、新しい観光資源を創り出そうという試みになります。
そして「空港輸送強化」は、成田空港の機能強化に対応するというものです。
これが長期経営計画の「Dプラン」となります。
中期経営計画「D1プラン」
そして、長期経営計画「Dプラン」のうち、最初の3ヶ年の中期経営計画「D1プラン」で何をするかというと、
- 沿線開発…新型車両(3200形)導入、住宅・商業施設等の整備
- 観光振興…成田・柴又等の既存観光エリアの利用促進、新観光資源発掘
- 空港輸送強化…スカイライナー増備や利便性向上、設備・施設の改良
となります。
3200形の導入は気になるところですが置いておいて…
「沿線開発」「観光振興」は以前から継続していることなので、なるほどと思えるかもしれません。しかし、コロナ禍で成田空港利用が激減している中、「空港輸送強化」に引っかかる人が多いと思います。
では、京成が計画している「空港輸送強化」についてもう少し掘り下げてみましょう。
何故、このタイミングでスカイライナー増備なのか?
まず、京成がスカイライナー増備等で空港輸送の強化を計画しているのは、別に京成が単独で勝手にやっていることではありません。
『京成グループ長期経営計画「Dプラン」及び中期経営計画「D1プラン」の策定について』の31ページに、
成田空港機能強化(2028年度完了予定)
とあります。
唐突に出て来た「成田空港機能強化」というのは、成田国際空港株式会社側が2021年12月23日に発表した成田空港の機能強化計画のことです。
機能強化計画の目玉としては、
- B滑走路延伸(2,500m→3,500m)
- C滑走路新設(3,500m)
の2つ。
それに伴い、誘導路(7,471m)を新設したり、敷地を拡張(1,198ha→2,297ha)したりと、新しくもう一つ空港を建設するクラスの大きな計画となっています。
成田空港の機能強化に伴う工事が完成するのは2029年3月31日(2028年度末)予定なので、それに合わせて、京成側では、
- スカイライナーの増備
- 停車パターンの見直し(ダイヤ改正)
- 宗吾車両基地の拡大
を実施して、成田空港の機能強化による空港利用客の大幅増に備えるという事です。
ただし、大前提のハードルが高い
ここまで読んで、「ワクワクする様な計画が進もうとしている」ことが分かったと思いますが、中期経営計画の数値計画に前提条件をつけています。
『京成グループ長期経営計画「Dプラン」及び中期経営計画「D1プラン」の策定について』の38ページに、2024年度時点の前提条件が記載されています。
全体 | コロナ禍による行動制限等の 社会的制約がない |
定期外輸送人員 (成田空港輸送人員除く) |
2019年度並み |
成田空港輸送人員 | 2019年度を上回る |
定期輸送人員 | 2019年度の9割程度 |
その他 | 2022年9月1日付で 新京成電鉄を完全子会社化する |
そして、41ページに設備投資計画の金額が記載されており、運輸業のうち、鉄道事業は745億円を投資する予定で、車庫(宗吾車両基地)機能の拡充や車両新造も含まれています。
ただし、これらは、2024年度時点で利用客がコロナ前の水準に戻るという前提です。裏を返せば、2024年度決算でコロナ前までの水準に成田空港利用が戻らない(計画途中で戻る見込みがない)のであれば、スカイライナーの増備は見送る可能性もあるということです。
京成沿線にお住まいの方や鉄道ファンの方はご存知の通り、コロナの発生により、成田空港の需要が激減し、京成はその影響をダイレクトに受けています。少々乱暴な言い方ですが、成田空港と一蓮托生の状態です。
もちろん、成田空港の利用客が多ければ京成の利用客も増えるので収益が出ます。しかし、成田空港の利用客が少なければ京成の収益もそれだけ下がり、その結果が、2020年度・2021年度の赤字決算として出ています。
そのため、今回のV字回復が見込める様な計画を立てつつも、「最初の3ヶ年で(もしくはその前に)計画を見直す可能性もありますよ」ということを含んでいると考えられます。
編集後記
鉄道趣味的にはスカイライナー増備はワクワクですが、こればっかりは仕方ないですね😿
関連リンク
京成グループ長期経営計画「Dプラン」及び中期経営計画「D1プラン」の策定について|京成電鉄
成田空港の更なる機能強化 滑走路整備計画の概要について|成田国際空港株式会社 機能強化専用HP「成田空港の明日を、いっしょに」